寄紙入恋(かみいれによするこい)
最後に、『万載狂歌集』巻第十二にに収められた、誰袖の狂歌をご紹介したい。
寄紙入恋
忘れんとかねて祈りしかみ入(いれ)のなどさらさらに人の恋しき
忘れたいと以前から神に祈っていたのに、その人の記念の更紗の紙入れを手にすると、なぜ、こんなにも、なおいっそう恋しくなるのであろうか(現代語訳 角川書店『鑑賞日本古典文学』第31巻参照)
これは『万葉集』東歌「玉川にさらす手つくりさらさらに何ぞこの子のここだ愛(かな)しき」の本歌取りである。
会いたくても、会えない恋しい人がいて、いっそ忘れてしまいたいのに、その人からの贈り物である紙入れを手にすると、思いはなお募っていく——という意味のこの狂歌は、誰袖の思いを詠んだものなのだろうか。
だとしたら、誰を思って詠んだのか。
ドラマで答は描かれるのだろうか。