日産自動車が公開した第3世代となる新型「リーフ」
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 巨額の最終赤字を計上した日産自動車が復活の先兵たる期待を込めて今年リリースする新商品、第3世代「リーフ」。だがBEV(バッテリー式電気自動車)はライバルの性能向上、価格低下が著しく、その中で日産がBEVのパイオニアとしての強さを見せられるかどうかは未知数だ。第3世代リーフの成功の条件とは何か、自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が考察する。

経営危機から脱するにはひとつの「三振」も許されない状況

 6月24日、約6700億円という巨額の最終赤字を計上した日産自動車の株主総会が開催された。

 イヴァン・エスピノーサ社長はグローバルでの工場閉鎖や2万人の人員削減を軸とした経営再建策を説明したが、内容はこれまで公表されてきたことで、どの工場を閉めるといった具体的な発言はなかった。また内田誠前社長はじめ経営陣の選任や経営方針策定などで権力を振るった社外取締役陣は一切責任を問われることなく再任された。

 出席したある株主は、こう語る。

「たしかに怒号も飛びましたが、こんな状況で株主総会に出席するのは基本的に日産愛にあふれた人。中には『父親の代から日産車に乗り続けてきた。いつになったら立ち直るのか』と涙ながらに訴える株主もいたほどでした。それに対してエスピノーサ社長はうまくかわすような回答に終始。とりあえず今日を無難に乗り切ることを最優先させたという感じでした」

 投資家や日産ファンにとっては何ともフラストレーションのたまる株主総会だったであろうが、日産側の議案はすべて承認。まさに無難に乗り切ったといったところだろう。

 だが、今日を乗り切れば明るい未来が来るというわけではない。現実問題として日産はリストラによるコストダウンと顧客に受け入れられる新商品の投入、顧客を失望させないサービス改革など、難しい課題を同時並行的に解決していかなければ復活はない。

 株主総会に先立つ6月17日、日産はBEVの新商品、第3世代「リーフ」を公開した。昨年に経営危機が露見してから初めての大型新商品だが、BEVは世界の自動車メーカーが技術水準の向上やコストダウンに四苦八苦している難しいクルマでもある。

 第3世代リーフが日産復活へのチャレンジのトップバッターとなるのは、リーフを乾坤一擲の決め球と考えていたからではなく、経営危機とリーフのモデルチェンジのスケジュールがたまたま合致してしまったからだ。

 日産としては、もっと数を見込め、利益率も高いモデルで勝負をかけたかったことだろうが、経営危機から脱するにはひとつの「三振」も許されない崖っぷちの状況としては、第3世代リーフをサブ商品にしている場合ではない。

 株主総会では第3世代リーフのビデオが長時間流されたことからも、第3世代リーフをブランド力復興を果たすためのモデルに仕立てるつもりはあるようだ。

第3世代「リーフ」