第2世代リーフ、アリアと失敗を重ねた理由
グローバルのBEVマーケットにおける日産のポジショニングは衰退の一途をたどっている。2024年のブランド別ランキングではトップ20にも入らなかった。第1世代リーフの投入で三菱自動車とともにBEV量産のパイオニアと目され、テスラが「モデル3」を発売するまで低価格レンジで世界首位をキープし続けた姿は今では見る影もない。

ターニングポイントは第2世代リーフだった。2017年に発売された時点では総容量容量40kWhという当時の低価格BEVとしては余裕のあるバッテリーを搭載し、電気モーター出力も向上。スタイリングも第1世代に比べてより一般受けするものにリメイクされたことで、登場当初は販売好調だった。
だが、現代のBEVでは装備するのが当たり前となっている、充電を安定して行うのに必要なバッテリーの温度管理システムを持たないことをはじめ、クルマの基本部分の大半をBEV技術がまったく未成熟だった時代に作られた第1世代から流用するというお手軽なクルマ作りが後に逆風を招いた。


第2世代リーフが出るまではBEVといえば高級車のテスラ「モデルS」、「モデルX」が例外的に売れただけで、普及価格帯では日産とアライアンスを組むルノー「ゾエ」以外にまともなコンペティターはついに登場せずじまいだった。
クルマ作りに限らず、競争相手がいない時のビジネス上の判断は非常に難しいもので、一人で走り続けることに不安を覚えて手を緩めるという選択をしてしまいがちだ。第2世代リーフはまさにその産物だったと言える。
本当に覇権を競う気があるのならテスラに真っ向勝負をかけるべきだったが、IoT分野でテスラが強すぎたこと、開発段階ではテスラが普及価格帯に降りてくるとは考えられていなかったことなどを考え合わせると、直接対決を避けるという選択に走ったのも無理からぬところではある。
この判断は徹頭徹尾裏目に出た。開発が後戻りできない段階に差しかかったタイミングでテスラが当時としては驚異的な性能価格比の「モデル3」を公開し、それに対抗不能なことが分かっていながら発売せざるを得なかったのはさぞや屈辱だっただろう。
それでも敵がテスラだけならまだよかった。2019年頃を境にそれまでほとんど沈黙を守ってきた欧州勢や中国勢が続々とアップデートされた技術を搭載する新鋭機を投入してくると、それらにも性能的に対抗できず防戦一方に追い込まれた。技術トレンドやライバルの動向を見誤ると、技術やノウハウがあっても敗北するという典型例となってしまった。
日産としては沽券にかかわるこの事態。本来は2020年に発表した「アリア」でその汚名を返上したいところだったのだが、発売にもたついたうえ生産トラブルで商品を供給できない状態が年単位で続くうちに競合モデルに先を越されて埋没してしまった。

第2世代リーフ、アリアと失敗を重ねた日産にとって、第3世代リーフは“三度目の正直”である。