ロンダリングされた資金が向かう先

 奇しくも、先般、タイやベトナムの銀行を利用し、SNSでの投資詐欺やオンラインカジノを含むマネーロンダリングをしている拠点をいくつか見つけてぶっ潰したところ、事件に関与した中国人らを日本国内で再逮捕できました。

 ここから浮かび上がるのは、SNSで割と簡単に騙されたり、違法と知らずに手を出したりして大変なことになっているという実態と、そこで得た違法な収益が決済代行業者から暗号資産交換業者や海外の銀行を通じて綺麗な資金として日本に返ってくる仕組みができてしまっていることです。

 ロンダリングされた資金は国内で差し押さえることが原則難しく(仮に犯罪によって得たものだとしても)、こうした資金が大阪や京都における中国人向けの民泊施設の物件取得に流れ、民泊施設の経営という名目で中国人の経営管理ビザの取得につながっているのだとすれば大変問題です。

 やはり、犯罪収益移転防止法など既存法をしっかりと改正し、少なくとも日本政府・捜査当局が問題口座を凍結させるだけでなく、没収できる仕組みを作らないと犯罪は止まらないと思うんですよ。

 また、呼び込みの窓口となっているTwitter(X)やLINEなどSNS事業者は、このようなトラブルによって被害が拡大し、事件化する前に、オンラインカジノへの集客や詐欺的な金融商品の提供などを謳うアカウントを凍結すべきでしょう。周辺アカウントに関する情報提供や、問題となるLINEグループも排除すべきです。

 既に効果を上げ始めていますが、違法オンラインカジノ対策も含めて囮捜査も進んできているところですので、どのように蛇口を締められるようにするのか知恵を絞るべき段階に差し掛かっていると思います。はい。

山本 一郎(やまもと・いちろう)
個人投資家、作家
1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し、『ネットビジネスの終わり(Voice select)』『情報革命バブルの崩壊 (文春新書)』『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』など著書多数。
Twitter:@Ichiro_leadoff
ネットビジネスの終わり』(Voice select)
情報革命バブルの崩壊』 (文春新書)
ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(文藝春秋)