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(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 2026年3月に開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の国内での独占放送権を米動画配信大手ネットフリックスが獲得した。

 そしてネットフリックスは、大会の全47試合をライブで配信するが、地上波中継については、録画放送も含めてしないと発表した。

 日本のテレビ局全滅。

 Xでは「無理やり金取って放送してるNHKは何やってんの」「課金してるからWBCをやってくれよNHK」などと主にNHKが槍玉にあがり、怨嗟の声が広がった。

 巨人ファンで元日テレアナウンサーの徳光和夫は「地上波の放送がないんで。本当に日本のテレビ局、何やっているんだと私は思うんです」と怒った。

 しかし徳光なら、現在のテレビ局の実情はわかってるのではないか。

 ネットフリックスの売り上げはざっと5兆円(2023年度通期)。

 それに比べNHKは約6100億円、日テレ、TBS、フジ、テレ朝はいずれも2000億円台(2024年度、いずれもテレビ事業単体)で、日本のテレビ局5社が束になっても、ネトフリ1社にまるで歯が立たないのである。

 ただ、わたしは前回のWBCは見たが、今回はあまり興味がない。

 大谷翔平選手は好きだし、出場するようだが、前回の決勝戦で、大谷がトラウトを三振にとった瞬間、大きく吠え、グローブを放り投げたシーンが、嫌な記憶として残っているのだ。それに野球世界一なんかどうでもいいと思っている。

 だからネットフリックスが放映権を独占しようとそれはいいのだが、今年はNHKをはじめ、日本のテレビ局の報道姿勢の偏向ぶりが露呈した年でもあった。

“テレビ擁護派”でなくなった理由

 それにしても、ここまで日本のほぼ全マスコミが、親財務省・親中国に毒されているとは思わなかった。それらはいまや保守現実派から、ネット(SNS)との対比で、時代遅れのオールドメディアと揶揄された。

 しかし恥ずかしながらわたしは、60代の半ば頃まではテレビ擁護派だったのである。テレビ批判をする知識人がいると、いや、おもしろい番組も沢山あるよと、自分だけはオレだけはわかってる風のていで、悦に入っていたのである。

 やがて、テレビ局が怪しいと思い始めたのは、こういう点である。

①全般的に下請けいじめやADを奴隷のごとく酷使する、ブラック企業体質ではないかとの疑いがあったこと。

②番組の制作者、タレント、ともに見え透いた「作為」ばかりで、表現がすべて誇張、大げさである。テレビでほんとうのことはいえない、とわかった。