(文:泰 梨沙子)
好条件の求人情報を見てカンボジアに入国した外国人が、犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たない。監禁され、詐欺行為に加担させられたり、人身売買の被害に遭ったりするという。背後にあるのは中国系などの犯罪組織だが、当局の捜査が適切に行われているとは言えない。
カンボジアで好条件の仕事があると誘われた外国人が、入国すると監禁や人身売買の被害に遭う事件が増加している。在カンボジア日本大使館も、「少数だが邦人の被害事例も報告されている」として注意を呼び掛けている。被害拡大の背景には、カンボジアの未発達な法制度や汚職の蔓延によって、国内外の犯罪組織の取り締まりが容易ではない現状がある。
複数の邦人も被害に
カンボジアでは、台湾、香港などから来た若者が入国後に監禁され、不法行為に従事させられるという被害が昨年以降相次いで報告され、国際的な社会問題となっている。確認された事例に共通する特徴は、SNSで「未経験でも高収入。飛行機代の負担なし」といった好条件の求人情報を見て応募すると、カンボジア到着後にパスポートや携帯電話を没収され、連行された施設で詐欺行為への加担を強要される、というものだ。新型コロナウイルス感染症の影響で職を失った、東アジアや東南アジアの国籍の若者が狙われているという。
こうした事態を受けて、在カンボジア日本大使館は2022年8月、ウェブサイト上に注意喚起を掲載。少数の邦人も被害に遭っているとして、その被害の特徴を公開した。(表1参照)
在カンボジア日本大使館に問い合わせたところによると、邦人被害の事案を初めて認知したのは21年。その後、22年にかけて複数の被害を確認した。8月に注意喚起を掲載して以降、認知された被害は1件だという。
これまで大使館が認知した被害者の総数は公表できないとしたものの、被害者は20~50代のいずれも男性で、「一部には身体的な暴力を受けたと申述した被害者もいた」(同大使館)。被害者が滞在する施設では、振り込め詐欺などに悪用されるとおぼしき内容の文章を確認させられ、外出や外部との接触が制限されたという。
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