現地の事情をよく知る関係者は、「通報があった現場では、明らかに詐欺に使われると思われる携帯電話やパソコン、文書がずらりと並んでいたのに、警察が問題ないとして適切に捜査しなかったケースも指摘されている」と語る。

 1月にはシアヌークビルのホテルで、日本人20人が監禁状態にあるとの通報があったものの、カンボジア内務省の報道官は「捜査の結果、日本人19人が発見されたが、普通に滞在しており、問題は見つからなかった」と説明。事件性がなかったことを強調した。

 前出の関係者は、「日本人の監禁が指摘された現場でも、捜査が適切に行われたのか疑問だ」と懸念を示す。

 さらに、近年は中国人組織の犯罪行為だけではなく、日本の反社会的勢力による犯罪への懸念も高まっているという。

「ここ数年は日本の反社のカンボジア進出も目立っており、一般の日本人との衝突やトラブルも多くなった」(前出関係者)。

 カンボジア日本人会の小市琢磨会長は、「昨年2月に大使館で開催された安全対策連絡協議会では、日本人が加害者である犯罪が増加していることが議題となった。我々の周囲でも、在留邦人からの被害相談が増加しており、懸念しているところだ」と指摘する。

 在カンボジア日本大使館はウェブサイトで、「(カンボジアは)法制度が未発達で汚職も蔓延しているともされており、当局による取り締まりが十分ではなく、こうした不法行為に巻き込まれた場合には解決が容易でないこともあります」と説明。カンボジアでの就労を検討する際は、「勤務先が信用に足りるものか、安全が確保されているものか等につきご自身でよく確認し、確認できない場合は渡航を取りやめることも視野に入れて慎重に判断して下さい」として、注意を促している。

泰 梨沙子
2015~21年、アジアの経済情報を配信する共同通信グループ系メディアで記者を務める。タイ駐在5年を経て、21年10月に独立。フリージャーナリストとしてタイ、ミャンマー、カンボジアの政治・経済、人道問題について執筆している。

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