交渉の進展を阻むものは何か

 イランと米国の核交渉では、やはりその交渉テーブルに座っていない人々の動向が気になります。その筆頭はやはりイスラエルです。

 イスラエルは、この交渉に直接的な影響を与えるべく、ネタニヤフ首相がトランプ大統領に対し、そしてロン・ダーマー戦略担当相やダヴィッド・バルネア・モサド長官がウィトコフ特使に対して継続的に働きかけを行ってきています。6月9日にネタニヤフ首相の下で、開催されたイスラエルの安全保障会議を受けて、早速、同首相はウィトコフ特使と緊密にコンタクトをとることを彼らに指示したと言います。

 少なくともイスラエル側は、交渉が続く限りはイランの核施設への攻撃を行うことはしないようです。さすがに、トランプ大統領がイスラエル側に行動を慎むように警告している以上、トランプ大統領の怒りを買うような真似はできないということなのでしょう。

 ウクライナ戦争の停戦も実現せず、ガザの停戦も厳しい状況の中で、米国としてもこのイランとの核交渉を簡単に諦めるような状況にはないでしょう。興味深いことに、トランプ大統領は、ガザの停戦交渉にイランも関わっていることを記者会見でもわざわざ言及しています。あれだけ怒りやすいトランプ大統領も、イランとの交渉に限っては実に忍耐強いではありませんか。

 このように考えるならば、ハメネイ最高指導者の米国に対する厳しいレトリックにもかかわらず、当面、交渉は継続すると考えてよいはずです。

 国際社会やIAEAをはじめとして、この交渉の成功のために一層の知恵とサポートが提供される必要があります。例えば、ロシアのプーチン大統領も近々にテヘランを訪問予定ですが、プーチン大統領自らトランプ大統領に対して、イランとの核問題の解決を支援したいとのメッセージを送っています。

 今しばらく、近未来の中東の平和がかかったこの交渉の行方を慎重に見守ろうではありませんか。