
(松本 太:一橋大学国際・公共政策大学院教授、前駐イラク大使、元駐シリア臨時代理大使)
根っからアメリカ嫌いのイランの最高指導者ハメネイ師が6月4日にテヘランで行った演説は、核交渉の行方を紐解く上で傾聴に値します。少ししゃがれた声で話す、この86歳の最高指導者のメッセージのポイントは次のようなものです。
「イランは強い国であり、独立した国家です。私たちの原子力産業は世界でも最も進んだものの一つであり、何千人もの科学者、研究者、その他の労働者を雇用しています。私たちはこれらすべてを放棄すべきなのでしょうか。彼ら全員を失業させるべきなのでしょうか。私たちは正気ではないのでしょうか。
あなた方(アメリカ合衆国)は核能力を持っています。あなた方は原子爆弾を保有しています。あなた方は壊滅的な兵器を所有しているのです。
イラン国民が核濃縮(能力)を持つべき否か、あるいは、原子力産業を持つべきか否かを、あなた方が問いただす権利が一体どこにあるのでしょうか。私たちは主権国家であり、自分たちの未来を決める権利があります。これはあなた方には全く関係のないことです。これこそが私たちの独立の原則です。
最新のアメリカの提案は、私たちの教義にも立場にも100%反しています」
本稿では、米国が設定した2カ月の交渉期限が6月12日に迫る中で、果たして核交渉がまとまるのか否か、その交渉の中身を覗きながら、その行方を占うことにしたいとと思います。
