
(松本 太:一橋大学国際・公共政策大学院教授、前駐イラク大使、元駐シリア臨時代理大使)
トランプ大統領が中東訪問を終えた後のホワイトハウスのホームページは必見です。トランプ大統領が今回の中東訪問で成し遂げた成果が一瞬で分かるのですから。「The Trump Effect」(トランプ効果)と名付けられたページには、トランプ政権が誕生して以来、米国への投資を表明した名だたる大企業の名前が並んでいます。
実は、今回そのトップに、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、サウジアラビアの3カ国が掲載されました。まるで大企業の米国への投資が行われたかのような扱いです。その投資総額もそれぞれ1.4兆ドル、1.2兆ドル、6000億ドルと巨額です。日本円に直せば合わせてゆうに460兆円を超えます。
今後、サウジアラビアが追加発表する投資や契約も含めるならば、総額500兆円に達するかもしれません。OpenAI、ソフトバンク、オラクルの3社による米国への投資額5000億ドルが一挙に霞んでしまいました。
本稿では、米国からの視点を超えて、中東湾岸3カ国の目線に合わせつつ、今回のトランプ大統領の中東訪問がもたらした意味を深掘りしていくことにしたいと思います。
ディールの芸術が発揮されたトランプ大統領の中東訪問
今回の訪問では、トランプ大統領が得意とする「ディールの芸術(The Art of the Deal)」が、まさに中東の湾岸3カ国において最も遺憾なく発揮されたといっても過言ではありません。ムハンマド皇太子をはじめとして、カタールのタミーム首長、ムハンマド・ビン・ザーイドUAE大統領の皆がトランプ大統領との取引を一同に大歓迎し、最大級のもてなしをしました。