変調を来しつつある円金利を支える2つの「アンカー」
日本とギリシャの財政状態を重ねた石破首相の国会発言が話題になったが、欧州債務危機時のギリシャのように、海外投資家に自国金利の生殺与奪を握られるような状況は今の日本には当てはまらない。
とはいえ、今の円金利の上昇を円買い材料と解釈するのはいくら何でも安直すぎるだろう。
現状は「日本の超長期債市場に需給の不安がある。それは財政状態への懸念を映す恐れがある。この状況を額面通り反映するとしたら円は売られるはずだ」という程度がフェアな解釈ではないか。
ちなみに、石破首相の発言は2009年以降に勃発した欧州債務危機時のギリシャを念頭に置いた発言と思われるが、2025年時点で3大格付け会社のギリシャに対する格付けは財政健全化の進展が評価されたことで全て投資適格級まで改善しており、もはや「財政の落第生」としてギリシャを持ち出すことは適切な例ではないことは知っておくべきだ。
長年、円金利が低位で安定していた理由として、「日本は世界最大の対外純資産国であること」と「世界有数の経常黒字大国であること」の2点がアンカーとして理解されてきた。
長年、経常黒字が累積した結果、世界最大の対外純資産国になったという話なので2点といっても、同じ事実を指している。
これは要するに、「日本は外貨稼得能力が高いゆえ、海外からの資本流入に頼るようなことはない」という安心感があり、それゆえに「日本国債は内国債ゆえに格付けなど国外からの評価に無関心でいられる」という話である。
しかし、執拗に本欄では議論してきた通りだが、経常黒字大国ゆえに世界最大の対外純資産国という対外経済部門の事実は今も不変であるものの、それはあくまで表面的事実であって、内実はかなり変容している。