「その外貨建て資産は円に戻せるのか」という根本的な疑問
例えば、2023年末時点の対外純資産残高は約471兆円と33年連続で世界最大の地位を維持している。にもかかわらず、2022年以降に日本が経験したことは未曽有の円安局面だった(図表②)。
【図表②】

これまでも繰り返し論じてきたように、世界最大の対外純資産残高といっても、流動性の高い海外有価証券(対外証券投資)が過半を占めていた2000年代初頭とは異なり、現在は対外直接投資(端的には海外企業買収など)が過半を占めるという姿に変わっている(図表③)。
【図表③】

海外有価証券、例えば米国債や米国株であれば「リスク許容度が毀損したときに売却して円に戻す」という、いわゆる「リスクオフの円買い」の源泉となることが期待されるが、日本企業が経営判断の結果として購入した海外企業を軽々に売り飛ばすわけにはいかない。
筆者は「リスクオフの円買い」が迫力を失った背景には、こうしたストック面での対外経済部門の構造変化が寄与しているという仮説を持っている。
話を円金利に戻せば、結局、日本という国が多くの外貨建て資産を保有しているのは事実だとしても、それを円に還流させる経路が途絶しているのであれば、結果的に円の価値や日本国債の価値(円金利の水準)は劣後する方に動きやすいということではないか。