EVの乗り味はおおむねポジティブだが…
この2年で、輸入車を中心にバッテリーEVモデルが一気に増え、また日系メーカーでは日産の軽「サクラ」が市場全体を牽引している。
筆者は、自動車関連媒体各社や、輸入ブランドの業界団体である日本自動車輸入組合(JAIA)が主催するバッテリーEVを中心とした電動車一般試乗会で、インストラクターを務めている。

そうした中で、自動車ユーザーやその家族・友人とバッテリーEVに対する意見や感想を聞いていると、バッテリーEVの利活用が今後の普及について、おおむねポジティブという声が多い。
直近では5月中旬に横浜赤レンガ倉庫で開催された「ル・ボランカーズ・ミート2025」に参加して、フォルクスワーゲン「ID.4」を担当し同乗走行に参加した。1日11組、2日で合計22組が乗車した。
その約半数が、バッテリーEV初体験だった。
感想としては「出足がいい」「思ったより違和感がない」「静か」といった、バッテリーEVの特性を素直に感じる人が多い。
バッテリーEVの購入に対しては、「集合住宅なので充電が課題」「各種報道でリセールバリュー(下取り価格)が低いと聞いた」「まだ価格が高い」といった声が多い。
また、テスラ「モデル3」、日産自動車「リーフ」「アリア」のオーナーもいたが、自分のクルマとの特性の差をすぐに感じ取ることができたようだ。
その上で、バッテリーEVを一度経験すると、ハイブリッド車やガソリン車にはもう戻れないといった感想が複数あった。
日本だけではなく、自動車生産・販売台数が多い中国、アメリカ、日本、そして欧州などでは、バッテリーEV普及に向けた初期段階は終わったという印象がある。

いまはまさに、本格普及に向けた踊り場であることは確かだ。
だが、冒頭に述べたように、踊り場からの出口戦略について、グローバル市場で国や自動車メーカーの出口戦略が甘いという印象がある。
本格普及のためには、インフラ整備、新車価格抑制、バッテリーのリサイクル・リユースなどのエコシステムといった表現が繰り返されているだけで、国もメーカーもそれぞれが他人任せという感じがする。
また、従来の自動車産業の仕組みを越えた様々なパートナーとの連携という表現も良くきくのだが、その方向性についても先行き不透明と言わざるを得ない。
実需がないとバッテリーEVは普及しない。その実需をどのように作り上げていくのか、さらなる模索が続く。
桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
◎Wikipedia