ミニマムアクセス枠内の優遇でトランプ政権は納得するか

 備蓄米の落札が全国農業協同組合連合会(JA全農)に集中し、JAと結びつきが強くないと手に入れられない実態も裏目に出た。地域のJAは今年産の買い取り価格(概算金)を24年産に比べて3~4割も引き上げ、市場の需給逼迫感と先高観を強めている。流通が自由になったとはいえ、JAの影響力は依然として強い。こうした現状が米国から見て「閉鎖的」と映る理由でもある。

 ネット上では「海外ではこんなに日本のコメが安く売られている」という写真付きの投稿をよく目にする。輸出用のコメは生産段階から国内向けとは別枠で管理され、不足しても店頭に並ぶことはない。一方で、日本経済新聞によれば民間企業による海外産のコメ輸入量は24年度の20倍のペースだという。

 今年産の生産量が異常気象で落ち込めばさらなる混乱が避けられない。同時に、高値がコメ消費の減少を加速させ、需給が緩和して価格が一気に下がる可能性も否定できない。政府による需給調整が行き詰まり、民間企業が高い関税を払ってまでコメ輸入を急増させている現状を踏まえれば、輸入米をもっと国内の需給調整に役立てる考え方はありうる。

 主食用米の自給率は100%を維持している。ただ、供給を国内生産に全面的に頼る状況は天候異変で国内生産が大きく減少すれば一気に供給不足になるリスクを抱える。それが平成の米騒動の教訓だ。

 自民党内には米国産米の輸入をさらに増やすことについて慎重な意見はある。しかし、前年同期の2倍近いコメの高値が続けば国民の不満は夏の参院選に向けられる。日米関税交渉で自動車関税の撤廃を米国側から引き出すうえでもコメは強力な取引材料だ。

 問題はミニマムアクセス制度の中で優遇する案でトランプ政権が納得するかどうかだ。