障害のある子は人を引き付ける吸引力がすさまじい
──子どもをあえて預けて、自分が旅行に行ったりする経験も大切だとも書かれていました。
さくら氏:旅行はだいぶ行っています。
「お母さんが頑張ってね」「あなたが一番子どものことを分かっているから」という周囲からの何気ない励ましの言葉が呪いのようになり、頑なに人に子どもを預けることを避ける親も少なくありません。自分流に細かくルールを決めすぎて、とても人にはお願いできないという人もいます。

でも、私のほうが娘より先に死んでしまう日がくるかもしれない。その時に、私しかケアできない子を育てたら責任が持てないと思うのです。むしろ私一人が抱え込まずに、多くの人に見てもらえる環境を作っておかないと親失格だと考えるようになりました。
──この本を読んで感じましたが、障害のあるお子さんを持ったことで、人とのつながり方に関してすごく深く考察されて、それが結果的に豊かなコミュニケーションを生むテクニックの数々になっていますよね。
さくら氏:何でもできる子が1人で自己完結できてしまうのとは対照的に、障害のある子は1人では生きられないから、人を引き付ける吸引力がすさまじいのです。言葉を喋らないのに、人を集めて自分の周りにコミュニティを作ってしまう。フィクサーじゃないけれど、すごく動かされていると感じます。
さくら
社会調律家
次女に重度の障害があることを機に、障害がある子が生まれても誰も絶望を継続しなくていい世の中にするため、食・リハビリ・遊び・アート関連のプロジェクトを複数推進中。一般社団法人 mogmog engine 共同代表 / 一般社団法人 障害攻略課 理事 / 株式会社 デジリハ 共創事業部 / NPO法人 ユニークユニバース 理事 /オンラインサロン LIVE MY LIFE ・PLAY MY LIFE主宰。著書に『えがおの宝物 -進行する病気の娘が教えてくれた「人生で一番大切なこと」-』(光文社)がある。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。