学校には奇妙なルールがいろいろとある(写真:mapo/イメージマート)学校には奇妙なルールがいろいろとある(写真:mapo/イメージマート)

 ランドセル、スクール水着、頭髪規定などなど、学校には謎のルールが数多くある。なぜ学校はあれやこれやと事細かにルールを課すのか。『学校に蔓延る奇妙なしきたり』(草思社)を上梓した公立小学校教諭の齋藤浩氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──大人や教育者の意向をくみ取って、言われたとおりにするだけの子どもが本当にいい子なのか、と書かれています。

齋藤浩氏(以下、齋藤):学校は、教員の言うことをよく聞く子を育てることや、保護者に忖度することを目的にはしていません。社会に出て活躍できる人材を育てたいのです。社会に出るためにはどんな能力が必要かを考えなければなりません。そのためには、これから社会がどうなるのかも合わせて考える必要があります。

 AIの研究開発で有名なアメリカの発明家レイ・カーツワイル氏は、2045年に技術的特異点が起きると言っています。人工知能が人間の知能を追い越すタイミングです。もう目の前ですね。

 2050年問題(※)もあり、世界の人口は100億人近くまで膨れ上がっているのに、日本はむしろ1億人前後まで人口が減っているという見通しです。世界で資源の奪い合いが始まり、日本は少子高齢化で労働力は間違いなく低下します。

※2050年問題:2050年頃に発生していると予想される、地球規模の問題。世界的には、環境破壊、災害の頻発、資源の枯渇などが顕著になり、日本では少子高齢化が進み、労働人口が著しく減少している状況。

 そのような時代に、どんな能力を持った人たちが必要でしょうか。従順な子ではなく、臨機応変に人生や未来を切り開ける子になることが大切です。

 教育の現場では「良い子」は大歓迎です。でも、「大人にとって都合のいい子」は、その子の未来も、この国の未来も幸せにはできないと思います。

 高度経済成長期からその後しばらくまでは、ただ従順でもやっていくことができました。前例踏襲で言われた通りにやっていれば、確実に給料も上がりました。でも、もうそんな時代ではありません。学校から意識を変えていかないといけないはずなのに、その学校が必要な改革の最後尾を走っているのです。

──小学校に持っていくカバンがランドセルでなければならないことについて疑問を呈されています。

齋藤:私がかつて受け持った生徒が、遠足の日にランドセルを持ってきたことがありました。他の生徒たちが彼を見て笑いました。遠足にはリュックを持ってくるようにと言われていたからです。すると、その生徒はその日が遠足だと知っていたけれど、ランドセルが好きだからランドセルで来たのだと言いました。

 別の例では、遠足の日に、授業だと思ってランドセルで来たある生徒がいました。すると、教員が慌てて、学校にあった落し物のリュックを貸して使わせました。ランドセルは機能的なので、問題ないはずですが「遠足にはそぐわない」という勝手なイメージを持っていますよね。