業務のしわ寄せを発生させないようにするための「5つのキーワード」
ヒントとなるのは、3種類の休みの中で最も取得しやすいのは定期的な休みであること。定期的な休みには、社員全員が一斉に休むため業務のしわ寄せが発生しにくいという特徴があります。
業務のしわ寄せをできる限り発生させないようにするためのキーワードは、「適切な分量」「自己完結」「時間の融通」「場所の融通」「臨時代替」の5つです。
「適切な分量」とは、社員1人当たりの業務量を最適化することを意味します。年間365日のうち、定期的に取得する週休2日と祝祭日を含め年間120日が休みだとすると、勤務可能な日数は365-120=245日です。
しかし実際には、これに加えて年次有給休暇も付与されます。先出の調査によると2023年の有給休暇平均付与日数は16.9日。端数を削って16日としても、勤務日数は245-16=229日で考えておかなければなりません。
この現実を踏まえず、勤務日数245日で業務を設計してしまえば、週休2日や祝祭日は休めたとしても、別途有休を1日取得するだけで他社員にしわ寄せがいくことになるのは当然です。
さらに、社員の何%かは育児休業や介護休業を取得するかもしれません。また、病気やケガなどで、長期間療養しなければならないこともあります。それらの発生もある程度織り込んで業務体制を組んでおかなければ、やはり他の社員にしわ寄せが行くことになります。
また、「自己完結」できる業務体制構築も重要です。多くの職場では、上司などから差し込みでの業務指示を受けることが日常化し、社員がその日の業務を自己完結させられない構造になっていたりします。すると、定時を過ぎても業務を終えてよいのか判断できず、「帰ってもよいでしょうか」と上司に伺いを立てるといった奇妙な慣例が生まれてしまいます。
市場環境の変動が激しい中で、差し込みでの業務指示発生をゼロにするとなると難しいかもしれません。しかし、それはあくまで例外的対応であり、日常的な担当業務の完了は社員自身が決められるようにしておく必要があります。
そうすれば業務のやりくりをある程度は自分で判断でき、突発的な休みが必要な際にも「来週水曜までに完結させればよいから大丈夫」などと、しわ寄せを生まない形で対応しやすくなります。
さらに、「時間」や「場所」の融通が利く働き方も、休み方改革には効果的です。
例えば、子どもが熱を出して日中は看病が必要な場合でも、子どもが寝静まった夜に自宅で業務を行うことができれば柔軟に対応でき、同僚たちへのしわ寄せ発生を減らすことができます。休みたくない時に休まずに済めば後ろめたさを感じずに済み、結果として休みたいときに休める環境づくりにつながります。
加えて「臨時代替」が可能な体制、すなわち業務委託や人材派遣など突発的な穴埋めや一定期間業務を代替できる手段を確保しておくことも、業務のしわ寄せを防止して休みをとりやすくするうえで有効です。
「適切な分量」「自己完結」「時間の融通」「場所の融通」「臨時代替」に対応しないまま「休みなさい」と号令をかけるのは、“無理ゲー”の押しつけでしかありません。業務にしわ寄せが生じるのが確実な中、休めるはずがないのです。
週休2日制なのに土日出勤が慢性化しているなど、定期的な休みでさえ上手く取得できない職場があるのも、これら5つのキーワードへの対応が不十分だからに他なりません。