栄養面ではエビデンスが不足
有機食材の栄養面での評価は、まだ固まっていない。
オーガニック給食の普及に携わっている食学ミネラルアドバイザーの国光美佳さんによると、ミネラルを多く含むオーガニック給食の栄養的な有効性については、十分な統計データがそろっていない。その一方で、子どもたちへのプラスの変化を確実に感じている、という。

例えば、ミネラル分が豊富に摂取できる特性の練り味噌スープを、午前中に摂るよう助言したところ、噛み付く子どもが減るといった変化が出てきたという。
「味噌汁を飲み始めた子どもたちは、体温が上がっています。今までお部屋の中でじっとして遊んでいることが多かった子どもが、味噌汁を飲むようになってから体温が上がって、毎日外遊びをたくさんするようになったとか、お友だちの繋がりができてきたとか。そういう話を協力した園から聞いています」
エビデンスがさらに増えれば、オーガニック給食普及の後押しになると考え、国光さんは今、そのデータを取り続けている。
アレルギー対応、遊休農地対策、そして、集団生活の中で少し気になる子たちのケア……。「他の課題解決に取り組みながら、気づけばオーガニック給食になっていた」というこれらのケースは、「有機重視」が発端ではない。有機食材の導入は段階的で、こだわりの程度も最初は決して強くなかった。オーガニック給食へと続く道は、1つではなく、いくつもある。
益田 美樹(ますだ・みき)
ジャーナリスト。英国カーディフ大学大学院修士課程修了(ジャーナリズム・スタディーズ)。元読売新聞社会部記者。著書に『日本語教師になるには』『チャイルド・デス・レビュー: 子どもの命を守る「死亡検証」実現に挑む』(共著)など。調査報道グループ「フロントラインプレス」所属。