イメージ先行の「オーガニック」に課題
例えば、有機野菜は虫食いや不ぞろいの食材が多く、調理現場の負担を増やしてしまうとよく言われる。木下さんはこのほかに、「オーガニック給食」「有機」という言葉のイメージにも課題を感じている。
「『有機』と言われたとき、私も最初は『ちょっと待って』となりました。日本では有機は特異なものとして捉えられてもいます。例えば、食べると身体が良くなる、病気が治ると言われます」
身体にどんな好影響があるのかなどのエビデンスが十分にそろっていないため、栄養学のプロとしては根拠なしにプラス効果を強調する動きを、冷静に見なければならない。「有機」という語句が持つ良いイメージだけが先行する場合もあるというわけだ。
木下さんは、こう振り返る。
「関係者と一緒に勉強をさせてもらって、有機の野菜だからではなく、子どもたちに、町で採れたものを食べてもらいたいから始めるんだ、という考え方を理解できました。そうした理解がないと、栄養士には取り組みづらいかもしれません」
だから現在でも、100パーセント有機食材に固執しているわけではない。地元で有機野菜が収穫できる時期に、給食で使うというスタンスだ。有機にこだわり過ぎると、遠くから取り寄せる必要が生じ、経費や環境の負荷も増すからだ。