専門職とゼネラリスト、どちらがキャリアに幅がある?

 例えば、ある人は「専門性を高めたい」という理由でエンジニア職を選びましたが、同じくエンジニアとして働く同僚たちが休日でもプログラミングに没頭し、楽しんでいる姿を見て、「自分にはそこまでの情熱はない」と感じたそうです。

 さらに、「あなたの書くコードは美しくない」と指摘され、次第に自信を失ったこの方は、最終的にはキャリアチェンジを決意しました。専門性に固執すると、このような事態も起こり得ます。

 専門性が高いキャリアは、実は汎用性のないキャリアでもあります。仮に、その職業が合わなかった場合、次の選択肢に悩む人も少なくないということを考えれば、ゼネラリストの方がキャリアに幅があると言えます。

 ただし、ゼネラリストは次のような悩みを持つことがあります。会社の成長フェーズが進んで人数が増えると、専門の部署をつくって組織を細分化する会社がほとんどです。そうなると、それぞれの専門性をもった人材が採用されることになります。その時に、「私の活躍できる場所はもうないのかもしれない」と不安に感じてしまうのです。

 しかし、ゼネラリストとしての価値が失われるわけではありません。むしろ、専門部署が増えることで、それらを横断的に支えたり、部門間の連携を強化したりする役割が求められることが多くなります。

 ゼネラリストならではの広い視点や柔軟性を活かすことで、組織にとって不可欠な存在であり続けることはできます。

 ゼネラリストが持つ強みとは、幅広い知識と経験を活かして、多様な業務に対応できる点にあります。

実はゼネラリストが最強である理由

 本稿ではこれまでやってきたこと(経験)を分解したものを「ピース」と呼びます。ピースがたくさんあればあるほど、描ける未来のバリエーションは増えます。ゼネラリストは、ピースを組み合わせて、さまざまなキャリア戦略を描くことができると言えます。

 ゼネラリストであることは、特定の専門性がないということではありません。むしろ、多様なスキルセットを持ち、多くの場面で価値を発揮するポテンシャルを持っているといえます。

例えば、ゼネラリストには次のような強みが備わっていることが多いのです。

●複数の経験から本質を見抜き、新しい状況でも適切な行動を取れる抽象化力
●さまざまな部門や立場の視点を理解した上で全体最適を考えられる俯瞰力
●異なる専門性を持つ人々の「通訳」となれるコミュニケーション力
●複数のタスクやプロジェクトを同時進行で管理するマルチタスク力

 ただし、1つ注意が必要です。状況的にいろんな役割を担わざるを得なかったタイプの方は、その方がパフォーマンスを発揮しやすいのか、どれかに絞った方が価値を発揮しやすいのかを考える必要があります。

 すなわち、次のキャリア選択において、その幅広い役割が自分のパフォーマンスを引き出すのか、それとも特定の分野に絞った方がよいのかを見極めることが重要なのです。