ゼネラリストの強みを打ち消さない工夫
ゼネラリストは、「自分の経験と強みを相手にうまく伝えられない」状態を避けることが大切です。
「なんでもできる」「幅広く対応できる」という表現は、一見魅力的に思えますが、「何が具体的にできるのか」を相手に伝わりにくくしてしまうことがあります。せっかく多くのピース(経験)をもっているのに、「何ができる人なのかがわからない」と評価されてしまうのは非常にもったいないです。
例えば私の場合、スタートアップ企業でエンジニアリング以外の幅広い業務を担当していたので、「カスタマー対応やアンバサダーコミュニティーの立ち上げ、オウンドメディアの立ち上げ、人事機能の立ち上げなど、実務を含めて幅広くやってきました」と伝えることができます。
ただ、応募先の企業が機能を細分化している場合、「うちの会社ではそこまで幅広くやることはない」と思われたり、「色々できそうだけど、何をお願いするのがいいのだろう」と迷わせてしまう可能性があります。
ゼネラリストは経験が多い分、解釈の幅も広がるため、その解釈を相手に任せすぎないことが肝心です。経験をただ羅列するのではなく、相手の企業が必要とする経験や能力をピンポイントで示し、どの場面で価値を発揮できるのかを明確に伝えることが成功への鍵となります。
ゼネラリストはピースを多く保有しているため、それらを組み合わせることで多様なキャリア戦略を描くことができるとお伝えしました。しかし、それを阻害する要因となるのが、「職種ラベル」です。
(1)職種ラベルの利点と限界
「職種」は、とても便利な概念です。職種の概念があることで、仕事のイメージを即座に共有できます。「英会話教室で講師をしています」と言われて、その人が経理を担当しているなど、実際と大きく異なる仕事内容を想像する人はほぼいないでしょう。
このように、職種ラベルは仕事のイメージを共有する上で便利ですが、同じ職種でも会社によって求められる役割やスキルが異なることがあります。つまり、「講師」という職種ラベルがついていても、その仕事内容は一律ではありません。
例えば、ある講師は「決まった教材に沿って教える」ことが主な役割である一方、別の講師は教材の開発や営業、チューター業務を兼務していることもあります。また、役職が上がれば、売上管理や採用、シフト管理など、さらに多岐にわたる業務を担当する場合もあります。
「講師」について具体的にピース化してみましょう。
●学習指導とサポート
●教材開発やカリキュラム作成
●集客施策の立案と実行
●反響営業
●スタッフの採用や育成
●スタッフのシフトや勤怠管理
●売上管理
ピースにすると、講師の仕事には「教える」という役割以外にも、企画、マーケティング、営業、採用、管理といった多岐にわたる要素が求められていることがわかります。
この業務の広さはまさに、いろいろな可能性をもったゼネラリストです。しかし、職種ラベルだけで考えると、これらすべてが「講師」という一言にまとめられてしまいがちです。この状態で他の職種にチャレンジするのは、相手に自分のスキルを十分に伝えきれないため、実現の難易度が高くなってしまいます。
(2) 職種ラベルに縛られずピースを再構成
キャリアを築く上で重要なのは、職種ラベルに縛られず、自分がどのような経験やスキルを持っているのかをしっかり認識し、それを他の分野でも応用できるようにすることです。
例えば、講師の経験から得たスキルや能力は、他の職種にどのように転用できるでしょうか。集客施策の立案や反響営業の経験は、マーケティングや営業職でのスキルとしても活かせます。さらに、スタッフの採用や育成の経験は、人事やマネジメントの分野でも役立つでしょう。
このように、職種の枠を超えて自分の経験や能力を再評価することで、新たなキャリアの可能性が広がります。職種ラベルに縛られることなく、自分が持っている多様なスキルや経験を活かし、より広い視野でキャリアを考えていくことで、キャリア選択肢を最大化できるのです。
