
NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第16回「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」では、蔦重が源内のもとを訪ねるが、源内は奇妙な言動を繰り返すばかりで……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
ミステリー仕立てにした「家基は18歳で病死」の背景
前回の放送では、第10代将軍・徳川家治(いえはる)の嫡男・家基(いえもと)が急死。ベテラン老中の石坂浩二演じる松平武元(たけちか)が、敵視していたはずの田沼意次(たぬま おきつぐ)をかばう場面が見せ場となった。
今回の放送では、武元が何者かに殺された挙げ句に、毒物を仕込まれた手袋が消えてしまう。
ナレーションで「田沼様の黒い噂はとどまる兆しはなく」と説明されたように、家基の死については、実際にも“意次犯人説”が囁かれたらしい。もっとも意次に家基を暗殺するメリットはない。他殺だとすれば一橋治済(ひとつばし はるさだ)が怪しいが、それを証明するのは難しい。
*過去記事(『べらぼう』幻となった「11代将軍・徳川家基」、わずか18歳で急死した期待の跡継ぎに立てられた“暗殺の噂”)参照
「公には病死とするほかない」と意次は調査を依頼した平賀源内に説明しているが、実際の家基も18歳での早すぎる死は「病死」と説明されてきた。
もしかしたら、私たちが今知る歴史的な事実の裏には、何か真相が隠れているのではないか――。『べらぼう』で描かれた家基の死にまつわるミステリーは、そんなふうに視聴者の想像力をかきたてる展開となった。