徳川11代将軍の家斉(写真:akg-images/アフロ)

 NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。4月27日の放送は休止となり、これまでの物語をドラマ出演者とともに振り返るスペシャル番組となった。そこで今回は、10代将軍・家治から11代将軍の家斉へと、いかにして将軍職が引き継がれたのか。そして、家斉の治世がどんな事態を招いたのかについて取り上げたい。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を分析した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

田沼意次の路線をことごとく否定した松平定信

 大河ドラマ『べらぼう』の反響が、放送を重ねるごとに大きくなっているようだ。いよいよ蔦屋重三郎が独立して店を構えることになった。ここから版元としてさらに飛躍する様子が楽しみだが、やはり気になるのが、田沼意次(たぬま おきつぐ)を中心とした「幕府パート」である。

 徳川10代将軍・家治(いえはる)のもとで老中となった意次は、幕府の財政を立て直すべく、さまざまな施策を打ち出していく。ドラマでは、ベテラン老中の松平武元(たけちか)がやや意次の障壁となったが、史実においては2人が対立した様子はなく、むしろ協力体制をとったようだ。

 やはり意次に立ちはだかった相手として、有名なのは松平定信だろう。意次のあとに老中となると、従来の路線をことごとく否定。「寛政の改革」を打ち出すことになる。

 蔦重も刊行物による政治風刺が定信に問題視され、処分を受けることになる。「田沼様の世の時はよかったなあ……」と、蔦重が振り返るようなシーンが今後あるかもしれない。

 だが、そうはいっても、改革の手段が異なるだけで、意次も定信も「幕府の財政を何とかしなければならない」という熱い思いは同じだ。

 幕府の財政難をいよいよ深刻にさせたのは、ほかでもない家治のあとを継いだ、11代将軍の家斉(いえなり)である。