トランプショックをどう受け止めるか

 日本の場合は、このグローバル化を、バブルの崩壊とリーマンショックという大きなストレスと並行して経験したので、どうしても現状維持の感覚が強くなり過ぎたように思う。

 影の部分を意識するにしても、周囲の経済環境が急速に変わっていくのだから、変化自体はしないといけない。変わりたくはないが、もっと高い成長はしたいという、ないものねだりがあったような気がしてならない。

 日本では、いまだに経済の「回復」という言葉も聞かれるが、それも、現在の環境における日本経済の実力、経済成長の巡航速度を見誤った表現なのではないか。そういう感覚が残る下での今回のトランプショックなので、何らかの対策によって望ましいところへ経済を戻すという議論になりがちだ。

 しかし、上述のように、米国経済の基本的なあり方の変化が起こっているのだとすれば、それ自体は日本の経済政策では克服できない。

 せいぜい実質で1%程度の成長が現状の日本経済の巡航速度であり、そこにまだはっきりはしないが、トランプショックでマイナス1%未満の下押し圧力が加わりそうだ。

 だとすれば、マイナス成長にはならないものの、「かつかつの実質プラス成長」というのが新しい日本の経済成長の巡航速度ではないか。それを引き上げるためには、トランプ政権下の米国を前提とした新しい世界秩序の下で、どう生産性を引き上げるかに腐心しなければならない。

 単に減税をしたり、金利を下げたりというのでは、これまでと同じで、生産性改善への道筋はみえてこない。まずは、再び日本経済の置かれた経済環境が大きく変わってしまい、そのため経済成長の巡航速度が低下したという不都合な事実を直視するところから考えを組み立ていくべきだろう。