米中は1年以内に交渉のテーブルにつく

細川:米中対立はエスカレートしていきますが、ピークを迎えて交渉モードに入るでしょう。タイミングの問題だけだと受け止めた方がいいと思います。

 今回は米国の追加関税に対して中国が報復措置をとったので、米国もさらに上乗せをしていくという格好でエスカレートのテンポが速くなりました。ただ、エスカレートし尽くしたあとは、習近平国家主席が取引に応じるというシナリオをトランプ政権は描いています。

 すでにトランプ大統領は「習近平氏からの電話を待っている」と発言するなど、取り引きをしたいモードになっています。中国側はトランプ氏をじらして、トランプ氏が妥協してくるのを待つでしょう。この駆け引きは第1次トランプ政権のときと同じです。

 今回はテンポが速いので、習近平国家主席とトランプ大統領の1日違いの誕生日がある6月にも「バースデー合意」があるのではという見方もあります。秋のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)での首脳会談を目指すのではという人もいます。

 いずれにしても年内には交渉に入っていくでしょう。

細川昌彦(ほそかわ・まさひこ) 明星大学教授、(財)国際経済交流財団特別参与
1955年生れ、東京大学法卒、ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。77年通産省入省。貿易管理部長、中部経済産業局長、スタンフォード大学客員研究員、ジェトロNYセンター所長など歴任。2020年9月より現職、グローバル企業の顧問・役員も務める。テレビでのコメンテーター、講演など多数。著書に『トランプ2.0 米中新冷戦 予測不能への備え方』『暴走トランプと独裁の習近平にどう立ち向かうか?』『 メガ・リージョンの攻防 』など。

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細川昌彦氏の近著『トランプ2.0 米中新冷戦 予測不能への備え方』(日経BP社)