唯一の「買い」材料とは
唯一の買い材料は、イランの地政学リスクだ。
トランプ氏は7日、イランの核開発問題に関して、週末に高官による直接交渉を実施すると発表した。これに対し、イラン側もオマーンで12日に会談が予定されていることを認めた。ただし、その会談は間接的なものになるという。
一方、軍事的な緊張も高まっている。
米軍は6機以上のB2ステルス爆撃機をインド洋に浮かぶディエゴ・ガルシア島に派遣した。イランとイエメンの親イラン武装組織フーシ派への戦力誇示が狙いだとされている。
イランも警戒を強めている。イラク、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、トルコ、バーレーンに対し、米軍がこれらの国々の領空や領土を使用することを含め、イランへの攻撃を支援するいかなる行為も敵対的行為とみなすと警告した。
予断を許さない状況が続いているが、市場では「12日の協議が次の協議へとつながる」との期待が生まれており、原油価格の上振れ効果は限定的だ。
価格の上昇要因は少ないものの、さらなる下落要因も少ないのではないかと筆者は考えている。世界の原油市場の需給ギャップが縮小する可能性が出ているからだ。
国際エネルギー機関(IEA)は米国やカナダなどの原油生産量が増加すると予測しているが、これらの国々の生産コストは高く、原油価格下落への抵抗力が弱い。
ロイターは8日「アナリストは米国の原油生産における損益分岐点は1バレル=60ドル程度と推定している」と報じた。米国の生産現場では「60台前半の原油価格では生産を続けられない」との声が出ており、操業を停止する兆しが出ている。