高コスト体質、広告収入減少が打撃

 この4社が経営統合を決めた背景には、民放を取り巻く厳しい経営環境が年々厳しさを増しているという事情があります。

 人件費やデジタル関連投資などのコスト増に加え、テレビ局は巨大な放送設備を定期的に更新しなければなりません。総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」が公表している資料によると、各家庭にテレビ番組を伝送する設備の更新経費は、NHKの場合で1年間に総額約125億円に上ります。

 民放全体の状況は公表されていませんが、仮にNHKと同じ送信局数を維持するとすれば、「民放の方がNHKより若干安くて済む」程度。民放の各局ベースでは、10〜15年に1回、数億〜10数億円の設備更新経費は絶対に欠かせないとされています。

 そうした高コスト体質にありながら、民放テレビ局の広告収入は低減を続けているのです。

 日本民間放送連盟によると、地上波放送を手掛けるテレビ局127社の2023年度決算は、地上波の売上高総額が2兆1435億円(前年度比0.2%減)、経常利益が1132億円(同14.7%減)の減収減益でした。このうち、東京・名古屋・大阪の3大都市圏の放送局では、経常利益がマイナス18.2%、キー局の系列に属さない独立局の経常利益はマイナス45.5%という厳しさ。こうした結果、127社のうち21社は赤字決算となったのです。

 この状況は2023年度だけの現象ではありません。その背景にあるのがインターネット広告費の急伸と、その影響をもろに受けたテレビ広告費の減少です。

 電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、10年前の2015年、テレビ広告費は1兆9323億円で、インターネット広告費は1兆1594億円でした。テレビが7000億円以上もインターネットを引き離していたのです。

 ところが、その差は年々縮小し、2019年にはついに逆転。インターネットは2兆円を突破したのに対し、テレビは1兆8000億円台にとどまりました。インターネットの勢いは止まらず、2022年には3兆円を突破。直近の2024年には3兆6517億円を記録し、4兆円台をうかがう位置に付けました。

 一方、テレビにラジオ、新聞、雑誌を加えた4大マスコミ(4マス)の2024年広告費は、2兆9611億円に過ぎません。旧来型マスメディアが束になってもインターネットに勝てなくなってきたのです。

 こうした状況を踏まえ、各局はデジタル配信に力を入れ、コンテンツを多様なメディアで販売することに力を入れています。それでも、経営環境の厳しさを脱却する決め手にはなっていません。