
物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。
今回は、キユーピーにおいてロジスティクス改革とIT部門の変革を続けて成功に導いたFujita Office代表・藤田正美氏をゲストに迎える。DXの本質、推進するための人・組織・基盤づくりとは?
任されたのは難題の改革ばかり
菊田 今回のゲストには、Fujita Office代表の藤田正美さんを迎えました。
藤田さんは2013年からキユーピーの(上席)執行役員ロジスティクス本部長として物流部門の改革を仕上げた後、2020年からIT部門に異動し、IT・業務改革推進担当上席執行役員に就任。険路を踏破し、4年間でIT改革/DXの基盤構築を果たして退任しました。超・難題の改革ばかりを任されたのも、経営陣の信頼がいかに厚かったかの証かと思います。
藤田正美氏(以下、敬称略) それは分かりませんが…IT改革はある意味、物流・ロジ改革以上に大変だった面があります。
菊田 かつて取り組んで困難を極めた物流改革以上に難しかったのでしょうか? ぜひそのキモを聞きたいと思います。というのも、最近は著名企業がERP(統合基幹業務システム)刷新に失敗し大損失を計上するなど、日本企業にとってIT改革は鬼門の1つであり、その成功事例は貴重なものになると思うからです。IT・業務改革推進担当に就任したきっかけは何だったのですか?
藤田 私がIT担当に着任したのは2020年2月。直後にコロナ禍対応が始まり、会社でも3月から在宅勤務/計画出勤が開始されるタイミングでした。ところが在宅勤務用のネットワークができておらず大慌て。世間でも他社さんもご苦労されたのと同じで、方々のベンダーに連絡して至急、ネットワークを確保しました。