地方基幹局による「水平型」統合

 テレビ局の苦境を踏まえ、放送行政を担う総務省は、2008年に大きな制度改革を行いました。それが関係法令の改正による「認定放送持株会社」制度の導入です。

 テレビ放送は大きな影響力を持っているため、仮に少数の者が放送局を支配すると、番組を通じて特定の者に対する利益誘導が行われたり、言論が偏ったりしかねません。そのため、2008年の制度改革以前は「マスメディア集中排除原則」が敷かれ、放送会社に対する出資規制が存在していましたが、法改正後は放送持株会社の設立を容認。総務大臣の認可を得て、各局が同じホールディングスの下に子会社としてぶら下がることが可能になりました。

 この解禁によって、民放界にはフジ・メディア・ホールディングス(2008年)やTBSホールディングス(2009年)、テレビ朝日ホールディングス(2014年)など12の認定放送会社が設立されています。今年4月に発足した読売中京FSホールディングス(FYCSHD)は、これらに続くケースだったわけです。

 ただし、これまでの持株会社はおおむね、自社が設立に関与したBS放送局やCS放送局を統合する「垂直型」でした。FYCSHDのように、地方の基幹局同士がつながる「水平型」経営統合は、今回が初のケースです。

 FYCSHDに加わるのはいずれも日本テレビ系列の放送局です。違う会社とはいえ、これまでも密接な交流は続いていました。では、他の系列でも地方局を交えた経営統合が加速するのでしょうか。どの系列にも属さない独立局には、どんな選択肢があるのでしょうか。FYCSHDの設立をめぐっては「本格的なテレビ局再編の皮切りになる」という見方と、「同系列の局が関係を強化しただけ。他の系列には即座に波及しない」という見方に分かれています。

 ただ、制度改正によって放送界でも持株会社制度が解禁されただけに、再編への土台が整ったことは確かです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。