3.実機の内部ではなかった機内写真
ロシア空軍のA-50早期警戒管制機内部と北朝鮮AWACS機の内部とみられる写真がある。
北朝鮮機の内部とみられるという理由は、壁面が機内のように曲線になっていること(写真赤点線)、朝鮮中央通信掲載写真の順序が、金正恩氏の機内登場の次にこの写真になっているからである。
それらの2つを見比べてほしい。実戦向きの機内か、地上の教室かというほどの違いがある。
写真3 左:北朝鮮AWACS機内? 右:ロシアIL-76 A-50の内部
ロシア機内部は、米日の電子戦機の内部と似ている。戦闘状態で作業を行い、大きな揺れでも対応でき、被弾した場合も兵士が脱出できる態勢になっている。
しかし、北朝鮮機の内部は、戦闘状態を想定して製造した航空機内部ではなく、地上のシミュレーション室のようだ。
機内の特色について、どのように異なるのか、この2つを比較する。
軍用機特に電子戦機、輸送機の内部には、天井付近には各種コードや機器が備えられ、壁面には航空機用の各種機器があるはずである。
朝鮮中央通信の機内写真を見ると、それらが全くない。
ロシア軍AWACS A-50の内部の機器類は、現在では近代化されているだろうが、北朝鮮の写真ほどスマートになることはあり得ない。
北朝鮮の機内は、軍用機の内部とは思えないほど、明るく綺麗だ。電子戦機などの軍用機内は、窓がなく、外部からの光は入ってこない。
電力は電子機器に使用するので、地上の部屋のようには明るくなく、作業ができるほどの明るさであり、一般的に薄暗いのが普通だ。
椅子は、飛行の揺れにも耐えて作業ができるように、あるいは緊急事態に対応できるように、頑丈で体を固定できるようになっている。
北朝鮮機内の椅子は、教室内の椅子と同じで、体を固定できるようにはなっていない。
実機では、床も揺れても滑らない処置が施されている。
北朝鮮機は、カーペットに滑り止めの処置がなく、まるで地上にあるコンピューターの教室のようだ。
これだと、機内で作業する兵士は、機体が傾けば転んでしまって、重力で立ち上がれなくなる。
私は、日本製の中型輸送機「C-1」から何度も落下傘降下したこともあるし、ジャンプマスターとして、機内で指揮をしたこともある。
機体が傾けば、作業中の兵が転ぶこともある。機体には、転倒防止や脱落防止の備えが絶対に必要なのである。
北朝鮮兵士の服装は、地上軍と同じで、空中で活動できる服装ではない。軍用機の搭乗員の服装と同じでなければならない。
また、緊急時には落下傘を装着して、脱出できる服装をしていなければならない。
この種の航空機は、敵にいつ撃墜されるかもしれないという状態にあることを想定して準備されているはずだ。