現地のフリーランサーや素人スパイに外部委託
ハンマーを使って街頭で殴り殺す計画や、グロゼフ氏に似せたラテックスマスクを被った男が民間航空機でロシアに飛び、カメラの前で逮捕されるよう偽装する一方で、グロゼフ氏本人を誘拐しシリアの拷問キャンプに送る『ミッション:インポッシブル』並みの案もあった。
ロシア包囲網が築かれるにつれ、プーチンは目立たない工作員を使う必要に迫られた。ロシアは作戦への関与を偽装する方法の一つとして現地のフリーランサーや素人スパイに外部委託するようになった。「なりたがり屋の素人スパイはとんでもない空想を巡らせる」(グロゼフ氏)
現地の犯罪集団、極右、ネオナチ、フーリガンへの外部委託はますます増えている。「文字通り干し草の山の中から針を見つけるようなもので、それぞれの国の治安部隊にとって特定が困難だ。本物のロシア人スパイを見つけるよりずっと難しい」とグロゼフ氏は指摘する。
グロゼフ氏らを対象にした作戦には十分な資金と機材が投入され、長期間(20年12月~23年1月)行われた。素人の殺意は時に暴走する恐れがある。プロなら無辜の市民や家族の命が危険にさらされる状況では事態を沈静化させる術を身につけているはずだが、素人スパイはそうはいかない。