モチベーション低下の危機

 そうした実態をうかがわせる調査も少なくありません。例えば、リクルートマネジメントソリューションズが2021年に実施した調査によると、役職定年などによって役職を外れた経験を持つ766人(50〜64歳)のうち、賃金が下がった人は8割に達する一方、やる気が下がったという人も6割近くに上りました。しかも、その後もやる気の戻らないと回答した人は全体の4割に達しているのです。

 今後も進む高齢化を見据え、2021年には改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会を確保するよう企業に努力義務が課されました。70歳定年の義務化を視野に入れた動きが進んでいるのです。

 定年をさらに延長する一方で役職定年制を残しておくと、従業員たちの士気は下がり続け、企業にとって必ずしもプラスにならない――。そうした見通しの下で、役職定年制を見直したり、廃止したりする動きが数年前から目立ってきたのです。

 人事院の「民間企業の勤務条件制度調査」によると、「役職定年制がある」は2007年に全企業合計で23.8%でしたが、直近の2023年調査では16.7 %にまで減っています。民間リサーチ会社などの調査でも、役職定年制の廃止や見直しに乗り出す企業は急速に増えてきたことがわかっています。