導入は首長らの腕の見せどころ

 かつて、法定外税の新設には国の許可が必要でした。転機となったのは、中央集権的な行政を見直す機運が高まった「地方分権改革」です。2000年4月に、財源などの地方移譲を進める「地方分権一括法」の施行に伴って地方税制が改正されると、法定外税の新設も「許可制」から、原則国側が同意しなければならない「協議制」に変わりました。この時、法定外目的税も新設されました。

 地方公共団体が税目や税率を決定する権利は「課税自主権」と呼ばれます。

 この権利は日本国憲法によって保障されています。

 第94条は「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」と明記。その上で、地方自治法第223条が「普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる」、地方税法第2条が「地方団体は、この法律の定めるところによって、地方税を賦課徴収することができる」などと定めています。

図:フロントラインプレス作成

 ただ、法定外税を巡って訴訟が起き、「違法」とされた例もあります。2001年に神奈川県が施行した法定外普通税「臨時特例企業税(通称・臨特税)」です。

 臨特税は、法人事業税の減収を背景に、神奈川県が「県独自の税源充実策」として創設しました。資本金5億円以上の法人のうち、「当期利益を上げながらも過去の赤字を欠損金として繰り越すことで法人事業税を減免された企業」を対象とし、欠損金相当額に原則3%を課税したのです。

 ところが、地方税法では法人による欠損金の繰越控除を認めていたことから、欠損金に課税する臨特税は違法だとして、ある自動車会社が提訴。2013年には最高裁が臨特税の違法性を認め、神奈川県の敗訴が確定しました。このため、神奈川県は2012年度一般会計補正予算で財政調整基金から635億4200万円余を取り崩し、それまでに徴収した臨特税ほぼ全額とその利息分全額を返還したのです。

 法定外税には“地方公共団体の知恵出し”の要素もあり、首長らの腕の見せどころでもあります。ただ、導入の目的が住民や地元企業の納得を得られていないと、「失政」「拙速」といった非難を浴びる事態になるかもしれません。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。