このアメリカ第一主義には、世界一の大国として自由貿易や民主主義を守るという姿勢が見られない。「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)というが、それは逆にアメリカの威信を傷つけている。

 トランプは、自由な民主主義や自由貿易を守るという理念などは持ち合わせていないようである。

民族主義の旗

 プーチンは、ロシア人が住む地域はロシアが統治すべきだとして、ウクライナ東部のドンバスを占領した。ウクライナ政府も、ロシア語を公用語から外すなどの差別的政策を展開し、住民の不満が高まっていたからである。2014年3月には、住民投票という手段によってクリミア半島をロシアに併合した。ロシア人の住む地域だという理屈である。

 この手法は、ヒトラーと酷似している。ヒトラーは、ドイツ民族が一つの国にまとまるべきだという考え(大ドイツ主義)であった。

 1935年1月、国際連盟管理下にあった独仏国境地帯のザール地方はほとんどの住民がドイツ人であり、1935年1月の住民投票の結果、ドイツに併合された。国際連盟の下での住民投票であり、これは国際的にも批判はされなかった。

 次いで1938年3月、ヒトラーは、大ドイツ主義を掲げてオーストリアを併合した(独墺合邦=アンシュルス)。

 ヒトラーの次の標的はチェコスロバキアである。ズデーテン地方に住むドイツ人がアンシュルスに力を得て、ドイツへの併合を求めたからである。

 イギリスのチェンバレン首相は、チェコ人とズデーテン・ドイツ人との仲介に乗り出し、1938年9月15日、ヒトラーの別荘、ベルヒテスガーデンでヒトラーと会見し、ズデーテンのドイツへの割譲を承認した。フランス政府も同調し、英仏両国はチェコスロバキア政府にそれを了承するように勧告した。