2024年の自衛隊観閲式(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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論戦が続く通常国会で「防衛増税」が焦点の1つになっています。少数与党の石破茂政権に対し、最大野党の立憲民主党は防衛増税の廃止を要求。2025年度予算案の修正を迫る構えを見せています。防衛増税は岸田文雄・前政権時代に決まった政府の方針ですが、石破政権にも引き継がれました。個人の所得税の上乗せもある「防衛増税」とは、いったい、どんな中身なのでしょうか。やさしく解説します。

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「反撃力」向上へ、防衛費をGDPの2%程度へ

 防衛増税はここ数年、政治の大きな課題となっています。2月14日の衆院本会議では立憲民主党の阿久津幸彦議員が登壇し、冒頭、次のように発言しました。

「所得税を含む国税は本来、国民のためにある。その実感を国民が得られないのは、税の再配分機能が十分に果たされてないからだ。税を納めても、どこに使われているのかわからない。賃金も上昇しない、社会インフラも思ったほど整わない、そもそも税の仕組みそのものが(国民には)複雑でよくわからない」

 そのうえで、防衛増税に言及し、「そもそも防衛増税については、与党内でも反対の声が根強く、(2024年の衆院選の結果)衆議院では、『防衛増税反対が過半数の意思』になっている」と強調。防衛装備の充足が必要だとしても、安易に増税に頼るべきではないとして、防衛増税の撤回を政府に迫ったのです。

 阿久津氏が取り上げた防衛増税の議論は、2022年12月にまで遡ります。

 当時、岸田内閣と国家安全保障会議は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」という、いわゆる「安保3文書」を改訂しました。

 その眼目は、自衛隊の「反撃能力」を向上させること。仮に日本が軍事攻撃を受けた場合、それを撃退するためには自衛隊に相応の武力が必要だとして、米国製巡航ミサイル「トマホーク」など兵器の新規導入、基地の整備、弾薬・燃料・食料などの確保などを図る方針を打ち出したのです。

 そのためには防衛費を増やし続けることが必要で、2027年度には日本のGDP(国内総生産)の2%程度にまで防衛費を増やす、という方針を示しました。日本の防衛費は1976年に当時の三木武夫政権が「国民総生産(GNP)比1%」という上限を政府方針として掲げて以来、1%を超すケースはほとんどありませんでした。

 巡航ミサイルの保有に象徴されるように、新たな安保3文書は軍事的にも戦後日本の大転換を示すものですが、予算面でも「GDPの2%程度」にまで増額するという大きな政策変更を伴ったのです。