所得税の増税、先送りのツケ

 一方、3税のうち、所得税の増税については開始時期の決定が先送りされ、正式決定に至っていません。政府・与党は当初、現行税率2.1%の「復興特別所得税」の税率を1%引き下げると同時に、税率1%の「防衛特別所得税」を創設。2027年1月から実施する方針でした。

 給与所得者から見れば、合計の税率2.1%は変わりませんが、東日本大震災の復興に充当する目的だった税金のおよそ半分を防衛費に回すことにしていたわけです。

 この方針が決定に至らなかった背景には、有権者の懐具合に直結する所得税の増税にはなかなか手を付けにくいという事情が横たわっていました。そもそも、岸田内閣が「5年間で43兆円」という大幅な防衛費増加を決めた2022年末の与党税制大綱においても、防衛増税の実施時期は明示的に盛り込むことができず、「2024年以降の適切な時期」としか書かれませんでした。

 そのため、防衛増税の議論は棚上げされたうえ、2023年10月には支持率低下に悩む岸田首相が2024年度からの増税を実施しない考えを表明。現在に至るまで、実施時期を明示できないでいるのです。

 2025年夏に参院選を控える与党としては、選挙後まで防衛増税に関する議論は封印すべきだとの議論も出ています。財源確保の具体化を避け、防衛費「増額」という規模の決定を最優先したツケが回ってきたとも言えそうです。