紹介されたのは富山市の魅力の一部に過ぎない

 NY タイムズ紙が紹介した富山市の魅力について全く異論はない。日本人観光客でも気づかない通な店選びには脱帽だ。とはいえ、記事そのものがコンパクトで、紹介されたのは富山市の溢れんばかりの魅力の一部に過ぎない。観光や仕事でこの地を何度も訪れたことのある筆者からみた魅力と課題について触れてみたいと思う。

 まず東京からのアクセスだが、昨年、NYタイムズ紙が選んだ山口市に比べ格段に行きやすい。北陸新幹線で東京駅から2時間30分で到着する。

 市内からの眺望がまた素晴らしい。雪景色の立山連峰が圧倒的な迫力で迫ってくる。特に今、冬の時季は最高だ。雪山を背景に走る路面電車の姿は絵になる。

 市内の移動は路面電車を使うと便利だ。令和2年に富山駅で路面電車の南北接続が実現し、南側は市内中心部を走る環状線、富山大学、南富山駅を結ぶルートがあり、北側は岩瀬浜まで延びている。

 路面電車の系統は全部で6系統あり、岩瀬浜から南富山駅前といったルートもある。5~15分間隔で運行し、車両も「ポートラム」「セントラム」といった最新型からレトロ列車までそろい、鉄道ファンでなくても乗ってみたくなる。観光に便利な一日乗り放題きっぷもあり、実に使い勝手がいい。

立山連峰と富山ライトレールの車両「ポートラム」立山連峰(奥)と路面電車(富山市、写真:共同通信社)

 3000m級の立山連峰から、天然のいけすと呼ばれる富山湾に雪解け水や雨水が流れ込み、プランクトンが豊富で、多彩な魚介類に恵まれている。「富山湾の宝石」と称されるシロエビをはじめブリ、紅ズワイガニ、ホタルイカ、バイ貝など“きときとな(新鮮な)”海産物の宝庫である。グルメでいえば鱒寿司やブラックラーメンも有名だ。

富山県の特産品で「富山湾の宝石」とも言われるシロエビ富山県の特産品で「富山湾の宝石」とも言われるシロエビ(写真:共同通信社)

 富山湾で水揚げされた新鮮な魚介類を使った地元ならではの料理を楽しめるのが、富山城や中央公園の南東エリアにある繁華街・総曲輪(そうがわ)を中心としたエリアだ。

「飛騨」は富山おでんが年中食べられるカウンターのみの店。他にも一人客でもふらりと入れるような小料理屋、寿司屋など地元密着型の飲食店が密集しているので、店選びに困ってしまうほどだ。しかも、新鮮な料理が東京の半値ほどで食べられる(個人的な印象)。

 今の時季なら何といっても寒ブリだろう。刺身、ぶりしゃぶ、かま焼き、ぶり大根などどれを食べても絶品だ。その他、ふぐの白子天ぷら、シロエビのかき揚げ、ばい貝やヒラメの刺身など魚好きにはたまらない。