山開きを行った富士山山開きを行った富士山(写真:ZUMA Press/アフロ)

 7月、夏山シーズンが本格開幕した。富士山は1日に山梨県側が、10日には静岡県側が山開きを行い、多くの登山者や観光客で賑わっている。富士山の山頂でのご来光体験は忘れられない思い出の一つだが、今シーズンも富士山に登るかと聞かれたら、答えはノーだ。あまりにも人が多過ぎる。今年はそんな雑踏を離れ、遠くの頂から3776mの絶景を眺めたい。山歩き歴30年以上のジャーナリスト山田稔氏が秀麗富士を眺める東京、山梨、長野の山歩きコースを紹介する。(JBpress編集部)

「一度も登らぬ馬鹿に二度登る馬鹿」

 富士山にはこんな“名言”がある。

「一度も登らぬ馬鹿に二度登る馬鹿」

 日本一高い山の雄大さ、荘厳さは一度登ってみなければ分からない。ただし、荒涼とした登山道を大変な思いをしてまで二度登る必要はない。そんな意味で使われてきたようだが、世界遺産に登録されてからというもの、あまりの人(登山者・観光客)の多さに辟易してこの言葉を使っている人も多いだろう。

 昨年(2023年)の富士山登山者数は22万1322人。2013年に世界文化遺産に登録されてからインバウンドを含めた登山者が急増し、京都と並ぶオーバーツーリズムの象徴となっている。

オーバーツーリズムの象徴となっている富士山京都と並ぶオーバーツーリズムの象徴となっている富士山(写真:ロイター/アフロ)

 筆者は20年ほど前、富士山頂で新入社員の採用面接を行ったアパレル企業の社員らに同行し、7合目の山小屋に一泊して山頂を目指し、ご来光とファッションショー、採用面接を取材したことがある。

 登頂前夜に仮眠を取り、2時過ぎに雨風が吹きすさぶ中、ヘッドライトの明かりを頼りに山頂を目指した。長蛇の列が続く中、黙々と歩くのみ。途中で立ち止まり、糖分補給で黒糖を口に含む。そんな単調でつらい歩行を終え、夜明け前に山頂に到着。

 やがて雨が上がり、すばらしいご来光を眺めることができた。採用面接に参加した30人余りの学生の3分の1以上は途中で高山病などで脱落。20人ほどが火口をバックに行われた、にわかファッションショーを見学し、その後の面接に臨んでいた。

 下りは順調そのもの。快晴の山頂から5合目までケガ一つなく無事に下山した。なかなか貴重な体験だった。富士登山はこれ一度きりである。もう登らなくてもいい、季節ごとの表情を遠くの山の頂から眺めるだけで充分だと思うようになっている。そこで富士山の絶景を楽しめる手頃なポイントを5カ所紹介したい。

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