山歩きには万全の準備と慎重な行動が必要(扇山)

「東京の山」で遭難者が増加している背景

 コロナ禍以降、アウトドア人気がますます高まっている。3密を避けられるうえ、ストレス解消にもなるということで、キャンプや登山、ハイキングに出かける人が急増しているが、その一方でトラブルや遭難も続出している。

 警察庁が6月9日に発表した「令和3年における山岳遭難の概況」で、コロナ禍における遭難状況を分析してみた。昨年は年間の半分以上の期間、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されていた。社会の閉塞感、個人のストレスは高まる一方だった。そうした状況下で、遭難発生件数は2635件と、前年を341件も上回った。主なデータは次の通りだ。

 警察庁データの山岳遭難には山菜取りや観光なども含み、遭難者全体に占める登山(ハイキング、スキー登山などを含む)の割合は77.9%となっている。

 北アルプスや八ヶ岳など人気の高山がひしめく長野県や、気象条件が厳しい北海道の遭難件数がやはり多い。驚くのが3位の東京都の増加ぶりである。前年は110件(6位)だったから4割以上も増えたことになる。コロナ禍で他県に行けなかったため、近場の山を選んだことが背景にあるようだ。

 東京の山といえば雲取山(標高2017m)をはじめとする奥多摩の山々が思い浮かぶが、昨年は高尾山(標高599m)で遭難した人が85人もいるというから驚く。低山といえども侮ってはいけないということだ。

【表2】を見ても分かる通り、富士山や3000m級の山が連なる穂高連峰などの高山、難易度の高い山での遭難が5年平均よりも少なくなっている一方で、高尾山をはじめとする里山など低山での遭難が増えている点に注目したい。