7月10日に投開票される参院選で大きな争点となっているのが「物価高」だ。当然だろう。昨年秋以降の原油高をきっかけにした値上げラッシュは、今年に入ってウクライナ情勢の長期化や円安も加わり急加速している。
帝国データバンクが6月1日に発表した〈食品主要105社、年内「値上げ」1万品目を突破〉というレポートも話題になった。物価高だけでも大変な事態だが、食料の多くを輸入に頼っている日本は、この先、深刻な危機を迎えることはないのだろうか──。食料品の輸入事情を探った。
あらゆる輸入食材の価格が今後も高騰する
「物価の優等生」と呼ばれるバナナの値上げの動きが広まっている。東京都中央卸売市場のデータを見ると、バナナの平均卸売価格(2021年4月から2022年4月)は1kg当たり157円。最も安かった昨年12月は110円だったのが、今年4月は177円と1.6倍に跳ね上がっている。肥料価格など生産コストや輸送費の上昇によるものだという。
輸入バナナの7割超はフィリピン産だ。フィリピン大使館は6月8日、日本の小売業界に対し、安定供給のために異例の値上げ要請を行い、会見したラウレル駐日大使は「困窮するバナナ農家に希望を与えてほしい」と語っていた。原油高やウクライナ情勢などが、生産地に疲弊をもたらしているというのだ。今後、国内でのバナナ価格の上昇は避けられないだろう。
バナナは一例に過ぎない。穀物、肉類、海水産物などあらゆる食料品の価格が、今年になって高騰している。国連食糧農業機関(FAO)が毎月発表している食品価格動向を見れば一目瞭然だ。今年3月には、不安定な国際社会情勢の影響で、食品価格指標が前月から18.6ポイント上昇し、平均で159.7ポイントと史上最高値をつけた。
最新の5月の指標は平均157.4ポイントで4月から0.9ポイント低下したものの、前年同月(128.1ポイント)に比べると29.3ポイントも上回っている。個別に見ても、穀物、植物油、乳製品、肉、砂糖のすべてが前年同期を大きく上回っているのだ。植物油にいたっては54ポイント以上の上昇である。
日本を直撃している円安も大きなリスク要因だ。円相場は6月22日に1ドル=136円台と24年ぶりの水準を更新するなど、収束の気配がない。1ドル=140円を想定する声も出ているほどだ。
こうなると輸入価格の上昇で、国内の食料品はさらに値上げ圧力が強まっていく。飼料価格の上昇は肉類や酪農製品価格に跳ね返るし、小麦粉などはパン、麺類やさまざまな加工製品の価格上昇をもたらす。野菜、魚介類、アルコールなどあらゆる輸入食材の価格が今後も高騰していくことを覚悟しなければならない。