(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役、法政大学大学院客員教授)
2022年1月初旬。「CES 2022」のメイン会場であるラスベガス・コンベンションセンターの屋外展示スペースで、ひときわ目を引くブースが出現した。地元ネバダ州に本社を構えるスペーステック企業「シエラスペース(Sierra Space)」のブースである。
同社は写真にあるように、宇宙ステーションに人員や物資を運搬するための宇宙往還機「ドリームチェイサー」の実物大模型を持ち込んだのだ。
民生技術の世界最大規模のイベント「CES」にシエラスペースが初出展した背景には、宇宙ビジネス市場を取り巻く大きな環境変化がある。
50~60年前の「アポロ計画」の当時、月を目指すロケットの打ち上げには莫大な開発コスト負担と人命に直結するリスクが伴い、ミッションはアメリカ航空宇宙局(NASA)を中核とした“一大国家プロジェクト”として推進された。
しかし現在ではミッションの主体が国際宇宙ステーション(ISS)への人員や物資の輸送など、多頻度で低リスク型のルーティーン業務へと軸足が移っている。
アメリカ政府による宇宙事業全体のコスト削減の思惑もあって「商用地球低軌道開発プログラム」(CLDプログラム)のような、NASAから民間企業へ、入札ベースでのアウトソーシングが進みつつある。
このような事業環境変化を千載一遇のチャンスと捉え、今後の伸び代への期待も含め宇宙ビジネスへ野心を燃やすスタートアップの代表がシエラスペースなのだ。
シエラスペースは大手宇宙航空メーカーであるシエラ・ネバダ・コーポレーションの宇宙部門を独立させる形で2021年4月に立ち上がった。2021年11月には航空宇宙・防衛部門において世界で2番目に大きい14億ドルという金額をベンチャーキャピタルの投資フェーズのシリーズAラウンドで調達し、注目を集めている。