文=甲斐みのり 撮影=平石順一
地元の人にも喜んでもらえるように
日頃から、チーズに目がないものですから、普段の食卓にも頻繁にチーズ料理を取り入れています。サラダやオーブン料理はもちろん、旬のフルーツと合わせてオリーブオイルと塩だけで味わうのがなによりのお気に入り。ポテサラ、肉じゃが、天ぷらやコロッケ、和食や家庭料理とも相性がいいので、冷蔵庫においしいチーズが欠かせません。
昨年、実家がある静岡県富士宮市に帰省中、「北海道から移住してきた方が、市内でチーズ工房を営んでいるんです」とお聞きしました。ちょうど工房がオープンする土日も実家に滞在していたので、さっそく朝一番に工房にお伺いしました。
工房を営む髙木宏昭さんは、愛媛県の生まれ。教師になるため北海道大学に進学したことで、酪農教育に出会ったそうです。乳製品について学ぶ中、多くの人にそのおいしさを知ってほしいと思うようになり、大学在学中にアイスショップを開きました。
大学卒業後の進路として一部上場企業から内定が出ていたものの、乳製品への興味は広がるばかり。結果的に北海道のチーズ工房や牧場で、チーズの加工や販売を学び、修行期間を過ごしました。そうして2019年に北海道から静岡県に移住。富士宮の酪農専門の牧場に就職して、生乳生産についても勉強したそうです。
富士山麓の富士宮市は、豊かな自然や綺麗な水に恵まれた土地。昔から酪農が盛んで、日本有数の酪農家が良質の牛乳を生産しています。しかしながら思いの外、地元で手に入る富士宮産のチーズはわずか。そこで髙木さんは、この土地の食材を使ったチーズを作り、地元の人にも喜んでもらえるようにと、2021年に自らのチーズ工房「七富チーズ工房」を立ち上げました。
そうして2023年には、富士山麓の牛乳で作るミルキーでジューシーな「富士山麓 潤いモッツァレラ」が、「令和5年度優良ふるさと食品中央コンクール」で農林水産省大臣官房長賞を受賞しました。それから、県内85の事業者が参加した静岡県主催の「ふじのくに新商品セレクション」でも、「富士山麓 潤いモッツァレラ」は1位となる最高金賞に輝きました。
今回紹介する「優勝記念 富士山セット」は、「ふじのくに新商品セレクション」最高金賞受賞を記念した、人気のチーズが5点入ったセット。初めて七富チーズ工房のチーズを味わう方にもおすすめです。
・富士山麓 潤いモッツァレラチーズ 80g
トマトをはじめ旬の野菜、いちご、もも、ぶどうなどのフルーツと合わせて、ワインとともに味わうのが最高。髙木さんいわく「わさび醤油と合わせて日本酒と一緒に」もおすすめだそう。
・焼きチーズ 80g
富士宮はキャンプの聖地としても知られた土地。焼いて味わうこちらのチーズは、バーベキューのお供にも。キュキュっと音をたてるほどの歯応えと、ミルクの風味がビールにもよく合います。醤油、味噌、大葉とも相性がいいそう。
・オリーブオイル漬け 120g
オリーブオイルに漬け込んだチーズは、黒胡椒やオレガノの香味がアクセントに。サラダやポテサラに和えるだけで特別な食卓に。もちろんそのまま食べても。
・ミルクリームガーリック 80g
ガーリックの風味がきいたクリームチーズ。私はバゲットに塗っていただきますが、「お肉やサーモンに合わせて食べても」と髙木さん。試してみたい!
・静岡県産オレンジピールのデザートチーズ
酸味がきいたほろほろのチーズに、ほんのり苦味がきいた静岡県産のオレンジピールを合わせています。ハチミツをかけたり、バゲットやクラッカーにのせれば、贅沢なワインのおつまみにも。
乳製品への造詣が深く真摯におだやかにチーズと向き合う髙木さんは、今では地元で親しみを込めて“チーズ王子”と呼ばれるほど愛されています。塩や調整剤は一才使用せず、ひとつひとつ丁寧に作るチーズは、地元のファーマーズマーケットで連日完売するほどで、富士宮市のふるさと納税でも大人気。富士山麓の大自然を感じられるチーズを、ぜひ味わってみてください。