文=甲斐みのり 撮影=平石順一
再び注目を集めるようになった「たぬき」
ひとつ作るのに、かなりの手間がかかるため、一時期は多くの洋菓子店で姿を消していたこともありますが、愛らし佇まいや、なつかしい味わいから、この何年かで再び注目を集めるようになり、復刻販売する店も増えてきた「たぬきケーキ」。
ある店の店主から取材時に伺ったところ、たぬきケーキは、日本が豊かになり始めた時代に、菓子組合の講習会などを通して広がっていったそうです。子どもたちに親しまれるよう、たぬきの姿に。当時はまだ生クリーム普及前で、その多くはバタークリームが使われていました。
最近では、冷凍や冷蔵便で取り寄せできる店が増えてきたので、いつでも好きなときに、たぬきケーキを味わうことができて嬉しいかぎり。
その代表格が、青森県十和田市に本店を構える和洋菓子店「大竹菓子舗」。和菓子職人だった先代のこだわりと、フランスで修行を積んだ当代・パティシエの技術が溶け合い、地元の食材を生かした菓子づくりが評判。地元・青森に根付くりんごのお菓子や、「魔女が魔法をかけて作ったスイーツ」がコンセプトの生洋菓子のシリーズも人気です。
大竹菓子舗の「たぬきケーキ」は、昭和43年の創業時から続く地域のアイドルのような存在。時代とともにリニューアルを重ねることで、懐かしさとともに今の暮らしになじむおいしさを味わえます。
土台は、ふうわりとしたスポンジケーキ。中には、青森県産の米粉を使ったカスタードクリームが入っています。その上に、生クリームをたっぷりのせて、チョコレートでコーティング。たぬきの顔はひとつひとつ異なる表情で、笑みがこぼれる愛らしさです。
さらに、たぬきケーキファンとして嬉しいのが、大竹菓子舗は他にも、たぬきケーキのアレンジお菓子があるところ。
「八甲田やまのたぬきさん」は、一度にいくつもの味を楽しめるスペシャルなデザート。「チーズ」は、チーズクリーム・レアチーズ・チーズスフレを合わせたチーズケーキ。「チョコ」は、チョコレートクリーム・バニラババロア・チョコスフレのチョコケーキ。それぞれ異なる味を3層に合わせ、たぬきの顔をのせています。「チーズ」は、青森のりんごで作るりんごジャム入り。
そうして、新たに誕生したのが「たぬきプリン」。なめらかなプリンのお風呂から、たぬきの顔がちょこんとのぞく様子が愛嬌たっぷり。パッケージに「プリン風呂 入浴中」とシールが貼ってあるのもユニークです。
全て冷凍便で届き、冷蔵庫で解凍するだけ。父・母・祖父母、もちろん子どもも。懐かしい気持ちが沸き起こったり、初めて見る愛らしいおやつに心とがときめいたり。世代を問わず楽しめるデザートです。