文＝甲斐みのり 撮影＝平石順一
理想的なレーズンサンド
所用で出かけた銀座をとことこと歩いていたところ。ふと視線を向けたビルの中に、新しくお店ができているのに気が付きました。ショーケースの中には、端正な焼き菓子がずらり。足取り軽く、いくつか持ち帰った中で、殊に気に入ったのが「レーズンサンド」。少しおおげさに聞こえてしまうかもしれませんが、これまで生きてきた中で、個人的にもっとも理想的なレーズンサンドに出会うことができました。
国産の小麦粉にきび砂糖を合わせたアーモンド入りのクッキーは、ぽってり厚みがありながら、さっくりと歯切れがよくソフトな食感。そこにサンドされているのは、濃厚なベルギー産のホワイトチョコレートと、北海道産バターを使ったバタークリーム。
それから、たっぷりラム酒が染み込んだ、みずみずしく芳醇な香りのレーズン。ひとつで十分な食べ応えがあって、それぞれの素材の余韻がいつまでも。職人さんがひとつひとつ心を込めて作っているのが伝わってきます。
実は私、幼い頃はレーズンがもっとも苦手な食べ物だったのですが、おとなになってレーズンサンドを知ったことで、苦手を克服できました。今でもレーズン単体ではなかなか手が出ないのですが、レーズンが、クッキー、バタークリーム、深い洋酒のコクをまとうことで、すんなり舌になじむのです。
このレーズンサンドセットを作っているのは、愛知県犬山市に所在する、レモンケーキと季節の焼き菓子のお店〈菓子屋shirushi〉。バターが香る生地に、手絞りした瀬戸内レモンをの酸味を生かして作るアイシングをかけたレモンケーキが店の顔。2023年の3月に銀座店がオープンしました。
レーズンサンドセットをお取り寄せすると冷凍便で届くのですが、定期的に変わる包み紙も楽しみのひとつ。夏の包み紙には「ほたるぶくろ」があしらわれていました。
春分・夏至・秋分・冬至と年4回、それから十二節気、二十四節気と、日本の暦に合わせてお菓子が届く「shirushiのお菓子の定期便」というのもあり、1年を通してその時期ならではの素材を使ったお菓子を楽しむこともできます。
犬山市には、大好きな建築の野外博物館〈博物館明治村〉があるので、近いうちに本店にも、訪れたいと思っています。
