文=甲斐みのり 撮影=平石順一

「宝石のカッサータ」4320円(税込・送料別) 販売元=ハラペコラボ

本物と見間違う見事な出来栄え

 食通としても知られる国民的お笑いタレントが「食べものを前に“かわいい~”と声にするのは女性特有の感覚で面白い」というようなことを言っているのを聞いて、日本の和菓子文化について思いを馳せた。

 いくらか前の話ではあるので、“女性は”と性別でひとくくりにするのは今の感覚にはそぐわないことではあるが、花鳥風月や季節の風物を和菓子で見立て味わうことが日常に根付いた私たち日本人には、確かに食に対して、ただ空腹を満たすだけでなく、“美しさ”や“愛らしさ”も楽しむ感覚が根付いている。

 誰でもSNSを通して広く情報や体験を発信できる昨今、見目美しい食べ物の写真を目にする機会が以前より増えた。私自身幼い頃から、目にもおいしい色や形が美しいお菓子が大好きで、食べることが好きな仲間がSNSに日々投稿する食の写真を楽しんでいる。

 福岡を拠点に活動をおこなうフードクリエイター集団「ハラペコラボ」が作る「こうぶつヲカシ」を知ったのも、ときどきおやつをお裾分けし合う友人がSNSにアップした写真がきっかけだ。

 こうぶつヲカシとは、色鮮やかな鉱物を、砂糖と寒天が原料の和菓子・琥珀糖で表現したハラペコラボの創作お菓子。宝石のような光沢を放ち、小箱に納められたその様は、“食べられる”という言葉が添えられていなければ、本物と見間違う見事な出来栄え。気軽に味わうお菓子を超えた、アート作品のようでもあった。「食べてみたい!」そうコメントしたところ、まだ少し残ってるからと、すぐにいくつかのかけらを届けてくれた。

 こうぶつヲカシの名前の由来には、古語で「風情がある」「愛おしい」という意味を持つ「をかし」という言葉も含まれているという。見た目の愛らしさだけではなく、ラズベリー、ブルーベリー、レモン、ミントなど、さまざまなフレーバーを用いた味わいも格別。ひとつずつ職人が手作りしているので、ひとつとして同じものはない。

 そんなこうぶつヲカシが散りばめられたハラペコラボのもうひとつの名物が「宝石のカッサータ」。イタリアのシチリアを代表する郷土菓子でリコッタチーズを用いたアイスケーキ「カッサータ」に、ラズベリー、オレンジピール、カシューナッツ、ピスタチオ、ベルギーチョコレートと、こうぶつヲカシを合わせた冷たいデザート。

 ハラペコラボのサイトから予約注文すると、缶入りの宝石のカッサータが冷凍で届く。それを凍ったままの状態で好みの厚さにカットして味わうのだけれど、断面に現れるこうぶつヲカシがまばゆく輝き、宝石を採掘したように胸が高鳴る。解凍時間によって食感が少しずつ変化するので、実験的に食べる時間を変えて口当たりの違いを感じるのも楽しい。目でもおいしく味わえる、贅沢で特別なお取り寄せ。