梅干し、かずの子、ワタリガニ…特産品の普及に活用

 それぞれの地域の特徴を全面に打ち出した条例もたくさんあります。

「紀州南高梅使用のおにぎり及び梅干しの普及に関する条例」(2014年)は、南高梅の誕生した町で、日本一の梅の町として知られる和歌山県みなべ町の条例です。おにぎりに梅干しを入れることを奨励し、住民は梅干しを食べて健康増進に努めるというもの。行政も事業者も町民もこぞって、梅干しや梅干しおにぎりの普及に励むとうたい上げました。

 同じようなカテゴリでは、かつてニシン漁で栄えた歴史を持ち、現在も国内有数のカズノコ生産で知られる北海道留萌市の「かずの子条例」(2016年)や、日本一のリンゴ産地・青森県弘前市の「りんごを食べる日を定める条例」(2007年)、埼玉県草加市の「草加せんべいの普及を促進する条例」(2011年)などがあります。

表:フロントラインプレス作成
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「ワタリガニの普及の促進に関する条例」は、大阪湾で有数のワタリガニ漁獲を誇る大阪府泉佐野市が2016年に制定しました。もっとも、ワタリガニの普及に努める内容とはいえ、市民や事業者などに求めたのは、まちで写真を撮るときのポーズという変化球です。

「写真を撮影する際にワタリガニを表す姿勢をとることを求めることその他の方法により、ワタリガニの魅力を市の内外に発信し、ワタリガニの知名度の向上に努める」(第5条)。はっちゃけた大阪らしく、写真を撮るときの掛け声は「はいチーズ!」などではなく、「ワタリガニ!」と発声するよう市も促しています。

 茶道の関係では、茶の湯の文化と産業の基礎を築いた松江藩松平家7代藩主治郷公にちなんだ島根県松江市の「茶の湯条例」(2019年)、さらには滋賀県彦根市の「井伊直弼公の功績を尊び茶の湯・一期一会の文化を広める条例」(2023年)もあります。

 そのほかにも産業振興、習慣・風土、暮らしなどに関連したユニーク条例は盛りだくさんです。次ページ以下の表を眺めながら、それぞれの条例に込められた思いをぜひ想像してみてください。