老衰、呼吸器系疾患、熱中症などの「外因」で死亡数が増加

 次に、気候変動に伴う死亡数の変化を死因別に見てみよう。

 現在の日本人の死因の第1位はがんだ。がんを含む新生物による死亡数は、気候変動が進むと減少するとの予測結果を得た。

 これについては、気候変動と新生物の間に因果関係があるとは考えにくい。むしろ、近年、温暖化と新生物死亡率の低下がそれぞれ進んでいることが、回帰式の作成過程で相関関係として捉えられていることが原因とみられる。今回の予測では、気候変動と死亡率の因果関係については明らかになっていない。今後、さらなる分析を要するものと考えられる。

 一方、気候変動が激しくなると、老衰、呼吸器系疾患、熱中症を含む外因で死亡数が増加するとの結果が得られた。新生物の減少よりも、これらの増加のほうが大きいため、全死因での増加につながっているものとみられる。こうした傾向は、男女別に見ると、男性で顕著となっている。

 特に、老衰は今世紀末に主な死因となるものと見られる。その老衰が気候変動の影響を受けて増加すれば、全体の死亡数も増加することとなる。