記者たちの自己顕示の場と化した会見
一方で会見に参加した記者たちの中には、まるで「不届きなフジ経営陣を糾弾しよう」といったつもりの者も見受けられた。
彼らの質問内容は玉石混交だった。もちろん理路整然と、的確な質問をする記者もいたが、そうでもない記者がかなり目についた。筆者もこれまでさまざまな記者会見を見てきたが、今回のフリーランスにも含め広く門戸を開放したフジテレビの会見は「これだけ記者の力量に差があるものなのか」と改めて勉強になるものだった。
マスコミの社員ジャーナリストや報道番組や週刊誌・ネットメディアの契約記者たちは、ある意味で媒体の評判を背負って活動しているので、比較的冷静にフジの役員たちへ質問をしていたように思う。そこで頓珍漢な質問をすれば所属している媒体の信用が揺らぎかねないので、ある意味、質問内容を吟味したうえで参加しているのだろう。また質問の際に声を荒らげるといったような行為も、媒体の信用やイメージを落とすことに直結すると理解している。
だがそういう制約のないフリーランスの記者の中には、質問ではなく私見を延々と述べる、説教に終始して質問せずに話し終える、自分の感情をコントロールできずにヒステリックに叫ぶ、登壇者の回答中に罵声を浴びせる、といった者も見られた(そのすべてがフリーランスというわけではないが)。またYouTuberなども参加し、被害者配慮のルールを破る人もいた。まるで会見の場を、自己顕示の場だと勘違いをしているようだった。
これにはテレビで会見中継を見ていた視聴者もだいぶ辟易したようで、X(旧Twitter)では「記者のレベル」がXのトレンド入りをしたほか、「フジテレビがマシに見える」「子どもに見せられない」などの酷評が続出した。フジテレビへの同情論が湧きあがってきたのだ。
もしもこの会見のノーガード戦法がフジの作戦であれば、これら常軌を逸した質問者たちはそこにまんまと乗ってしまったということになる。