
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
ボクシングの世界スーパーバンタム級主要4団体統一王者の井上尚弥選手(大橋)が1月24日、東京・有明アリーナで、WBO11位のキム・イェジュン選手(韓国)との防衛戦に4回KO勝ちし、統一王者3度目の防衛を果たした。当初の挑戦者の相次ぐ負傷によって1カ月延期と棄権による対戦相手の変更という異例ずくめのアクシデントを乗り越え、現役最多タイとなる世界戦24勝目となった。
ボクシング史上に残る圧倒的な強さは、軽量級でありながら、中量・重量級が好まれる海外のマーケットからも熱い視線が送られ、春に予定される次戦は米ラスベガスとなる見込み。さらに秋には潤沢なオイルマネーを持つサウジアラビアのリングに立つ可能性も浮上する。
すでに、サウジの国営娯楽イベント「リヤド・シーズン」とは昨年11月に総額30億円という破格のスポンサー契約を結んだ。今回は契約締結後の初戦とあって、トランクスにはロゴが入っていた。「階級の壁」を打ち破るモンスターの“拳”が巨額の富を引き寄せている。

「ちょっとムッとしました。絶対に倒してやろうと」
ゴンドラに乗ってド派手な演出で登場した井上選手。着用した白いジャージーの右上には「リヤド・シーズン」のロゴが入っていた。鍛え上げた肉体と精悍な顔つきには、一瞬の隙を見出すこともできないほどの闘争心を宿す。
リングに上がった王者の後ろでは、関係者が4つのベルトに、米老舗ボクシング誌ザ・リングから贈呈された認定王者ベルトも掲げる。相手を鋭くにらみつけ、試合のゴングが鳴るのを迎えると、序盤から距離を詰め、的確に相手にパンチを打ち込む。
そして、KOシーンは4回に訪れた。劣勢に立ちながら「打ってこい」とグラブで井上を挑発するキム選手に容赦なく、左のジャブから強烈な右ストレートを続けて、相手をロープへ弾き飛ばした。
「ちょっとムッとしました。絶対に倒してやろうと」
マットに沈んだ相手はそのまま立ち上がることはできなかった。