今もできていない外国人経営幹部と情報多元化
第三に、外国人参謀を持ち、情報ソースを多元化することだ。
「SHOGUN」で描かれるウィリアム・アダムズが漂着する前、日本に居住するヨーロッパ人は、ポルトガル人とスポペイン人といったカトリック教徒ばかりであった。世界は宗教戦争の真っただ中。プロテスタントの声は届いていなかった。
ウィリアム・アダムズの話を聞いて、家康をはじめ当時の指導者層は初めてヨーロッパにおける宗教戦争について本格的に知ったに違いない。
情報の多元化のためにも、外国人参謀を有力な部下として持つことが大事である。家康は、ウィリアム・アダムズを有力家臣に加えた。
400年前の封建時代と情報化された21世紀は大きく違う。しかし、21世紀の現在になっても、経営幹部の大半が日本人ということになっていないだろうか。情報ソースも、外国の取引先などを除けば日本企業や日本メディアからの情報収集に偏っていないだろうか。
「SHOGUN」には、現代の我々ビジネスパーソンが学ぶべきことがふんだんに盛り込まれている。機会があれば、グローバルビジネスの視点からも視聴していただると学びは大きいと思う。
山中俊之(やまなか・としゆき)
著述家/芸術文化観光専門職大学教授
1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。
2010年、企業・行政の経営幹部育成を目的としたグローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し、先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。コウノトリで有名な兵庫県但馬の地を拠点に、自然との共生、多文化共生の視点からの新たな地球文明のあり方を思索している。五感を満たす風光明媚な街・香美町(兵庫県)観光大使。神戸情報大学院大学教授兼任。
著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)。近著は『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)。