「SHOGUN」から得られるビジネスの教訓

 第一に、何度も書き換えるなど言葉にこだわることである。

「SHOGUN」では、最初の段階では英語の脚本であった。その英語脚本を日本語に直訳し、別の脚本家が時代劇の日本語の言い回しに書き換える。さらに、英訳し直して字幕をつけるという手間のかかる作業が行われた。

 単に日本語に訳しただけでなく、その日本語をさらに書き換えるという作業には驚いた。「日本語の分からない米国人が見るのであればそこまでは不要であろう」と考えても不思議はない。そこまで日本語の細部にこだわることで、米国人にも伝わる度合いが高まるのだ。

 グローバルでビジネスをする際に、伝わればよいとか翻訳機を使えばよいとか思っていないであろうか。

 日本企業のグローバルな事業展開を支援することを本業としている筆者は、「英語はとりあえず伝わればよい」とか「英語はツールに過ぎない」といった意見を聞くことがある。しかし、このような言葉に対する軽視がグローバル展開の障害になっているのではないかと改めて思った。

ゴールデングローブ賞のテレビドラマ部門で作品賞に輝いた「SHOGUN 将軍」。左から、コスモ・ジャービス、澤井杏奈、真田広之、浅野忠信(写真:REX/アフロ)ゴールデングローブ賞のテレビドラマ部門で作品賞に輝いた「SHOGUN 将軍」。左から、コスモ・ジャービス、澤井杏奈、真田広之、浅野忠信(写真:REX/アフロ)